さて、長々と英国タバコティスティングの前振りをしている訳だが、これも故あっての事である。
対象となるメーカーは、サミュエルガース・ガウィスボガード・ジャーマインとなるが、その3社のタバコを合わせると30缶近いボリュームになる。
30缶である。
しがないサラリーマンである身の上においては、1日中パイプをくわえて何ぞいられる訳も無い。
パイプタバコ30缶ともなれば、1年分の消費量に匹敵する。
これだけのボリュームのタバコを、行き当たりばったりで開缶するのは自殺行為に近い。
どこから攻めて行くか、ここは思案のしどころである。
幸な事に、サミュエルガースのタバコであれば、数銘柄吸った事がある。
その記憶は、他のメーカーのタバコをティスティングする際、比較対象として役に立ってくれるだろう。
また、ガウィスボガードはサミュエルガースから分かれたメーカーとの事である。
そんな訳で、全く初対面なタバコメーカー「ジャーマイン」を皮切りに、英国タバコのティスティングを行なう計画を立てた。
ただ、いざジャーマインのタバコをテイスティングし始めると、ついつい他のメーカーのタバコが気になり、サミュエルガースからはブラウンフレイク、ガウィスボガードからは、スコティッシュケーキを開缶して比較対象にする結果となった。
さらに、これは少々蛇足になるが、英国タバコのテイスティング計画と時を同じくして、イギリスの紳士とも言えるダンヒルタバコの、日本販売打切の情報が舞い込んで来た。
早速買い込みを掛けたので、頃合いを見て上げる予定にしている。
話が反れたが、英国タバコをティスティングするにあたり、前もって予測と言うか、その方向性を提示しておこう。
まあこれは、3社のヴァージニアを吸って見て感じた傾向であり、現時点での英国タバコに対する回答と言う事である。
ここから、様々なブレンドのティスティングを進める中で、現時点での見解に修正を加えながらゴールに向かう、こんな感じで行く計画である。
では早速、その現時点での見解、英国タバコの総評であるが、その回答は「ヘイタイプ」。
どうやら英国タバコの根底には、ジンバブエ等のアフリカ産のヴァージニアがあると見ている。
ここで、このアフリカ産のタバコに関しておさらいしてみよう。
これはダンタバコの単葉を試した感想なのだが、ダンタバコの主力となっているのが「インド産(マイソール)」である。
このタバコ、甘味と酸味が強めに出て来る、味わいが分かり易いタバコである。
これに対し、アフリカ産(ザイール・ジンバブエ)は、弱めの甘味・サッパリ目の酸味ながら、「干し草様」の香りを持つ。
贔屓(ひいき)目の表現をすれば、フレッシュで深みのある味わい、すなわちヘイタイプのタバコである事が判明した。
ただこのアフリカ産のタバコ、単品ではやや力不足と言うか、味わいにマイソール程のパンチが無いと感じたのも確かだが・・・
話が脱線したので戻すが、現時点での英国タバコに対する感想は、「英国パイプタバコ最大の特徴は、アフリカ産のヘイタイプヴァージニア」と言ったところである。
では何故、イギリスのタバコの根底にあるのが「ヘイタイプ」なのだろうか。
まあこの辺りは、大航海時代のイギリスの行動範囲に起因すると予測している。
もっとも歴史にそれ程くわしくは無いので、眉つばな話に過ぎないが、しかし英国の老舗メーカーのヴァージニアの加工技術の高さがこの辺り。
一言で表現すると「ヘイタイプであるが、単葉としては味わいの強さに欠けるアフリカ産ヴァージニアを、何とか分かり易い美味しさ、パンチのある味わいに仕上げよう」
この思考錯誤の果てにあると見るのも、面白いのではないだろうか。
そろそろ紙面が詰まってきたので話をまとめるが、ここまではあくまでも英国タバコに対する第一印象である。
すべての銘柄をテイスティングし終った後、どの様な感想になっているかは冷汗ものであるが、まあ先は長い。
「人の噂も75日」の諺を頼りに、のんびりと進めて行こうと思う。 |
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