第四章 閑話 パイプにまつわるエトセトラ

1.パイプに穴が・・・・・・


「バケツに穴が♪~」のような題名だが、今回の話題はパイプを焦がす事についてのお話である。


パイプ喫煙のハウ・ツーで必ずと言って良いほど取り上げられるのが、パイプを焦がす、ヒドイ場合は穴を開けてしまうと言ったトラブルだ。
パイプ物語2で、しきりに宣伝している企画「コーンパイプ探検記」。
柱は「パイプ喫煙の技術を身につける。」になるが、その重要な技術の一つと、「パイプに穴が・・・・・・」には深いつながりがある。
そんな訳で、宣伝をかねて経験談を語って行こうと思う。

とその前に、話がややこしくならないよう、定義だけしておこう。
まずはチャンバーから。
これはパイプの内側、すなわちタバコを詰めるところを指す。
それに対してボウルは、パイプの外側、手で持つ所と定義付けして話を進めよう。

二十歳からパイプ喫煙をしてきた経験からして、パイプを焦がす、ダメージを与える等の、経験はそれなりにして来た。
その経験から、パイプ喫煙技術として、パイプにダメージが入った時の症状や、ダメージを入れない方法などを解説したいと思う。
それでは早速、パイプを焦がした体験談を簡単に紹介して行こう。


まずはコーンパイプから。
パイプ物語でも書いたが、コーンパイプにはボトルネックが存在する、それがシャンク。
名称にもなっているトウモロコシの芯、パイプ素材として使われているだけあり確かに燃えにくいが、シャンクに使われている楓などは、燃えにくい素材とは言えただの木である、正直言って燃やす事はさほど難しくはない。
十数年も前の話になるが、マッカーサータイプの長いコーンパイプに、乾燥気味のアメリカタバコを詰めて、肺喫煙よろしく煙をガンガン出していた、その終盤の事である。
突然煙が白っぽくなり、密度も粗い感じになると同時に、割り箸を燃やしたような刺激的な煙になった。
慌ててタバコの灰を落とし確認したら、チャンバーの底にあるシャンクが、火のついた炭のように赤くなっていた、煙が辛いはずである。
そんな経験をしてからは、コーンパイプで喫煙する時は、シャンクに火が回る前で止める。
すなわち、タバコを燃やしきる手前で喫煙を終わらせるようになった。
それからは、コーンパイプのシャンクを燃やしたりする事は無くなったが、このようにパイプ喫煙において、避けては通れないパイプを焦がすトラブル、コーンパイプではそれが顕著に現れる。
これが、パイプ喫煙のチュートリアルにコーンパイプを選んだ理由の一つである。
コーンパイプで、チャンバーやシャンクを焦がさずに、最期まで喫煙できれば合格。
『コーンパイプ探検記』では、そんなハードルを設けて喫煙技術のハウ・ツーとする予定だ。

ただし、コーンパイプが焦げやすいとは言え、どこでも焦げると言う訳でもない。
私が経験した限りでは、焦げやすいのはチャンバーの底付近が多い。
パイプ喫煙において、よほどヘタクソに詰めて、無理矢理火を起こそうとしてガンガン吸わない限り、チャンバーの途中が焦げるようなことは無い。
基本、パイプが焦げるのは底の部分である。
理由は、パイプ喫煙の技術に関係する為、詳細までは書かないが、簡単に説明すると、タバコの火は中心部の温度が高く、チャンバー付近の温度は低い、これが物理的現象である。
原則、このような状態でパイプ喫煙は進んで行くが、喫煙終盤ともなるとそうは行かない。
詰められたタバコを全て灰にしようとすると、チャンバーの底に直接触れているタバコにまで火を回して行かなければならない、当然チャンバー内壁が焦げるリスクも高くなる。
これがチャンバーの底付近を焦がす事が多い原因である。

では実際、どのような症状がでるのか、経験を幾つか書いてみよう。
対象はブライヤーパイプである。
症状としては、一つ目が「ボウル底の一部分だけ」が異様に熱くなる。
二つ目の症状として、ボウルから暖かい香りがし始める事がある。
もう少し詳しく書くと、ボウルに染みたタバコの香りが、熱くなったボウルから立ち上る雰囲気だ。
三つ目に、異様に熱くなったボウルから、陽炎のような熱気と言うか、揺らぎが立ち上る事がある。
一番ヒドイ例として、ラッカー塗装されていたチャーチワーデンの、塗料が沸騰して泡だった事もある。
以上のような症状が出た場合は、タバコの火によりチャンバーにダメージが入っている事は間違いない。


さてここからが本番だ。
パイプ喫煙技術とパイプへのダメージ、どのように関係してくるのか、それをこれから説明して行こう。
今回話題にしているパイプへのダメージ、その予兆として現れるとある症状がある。
それが「異味の混入」だ。

パイプ喫煙を厳密に分析すると、極微料ではあるが、タバコの煙にパイプそのものの味も混じって来る。
ただし、質の良いブライヤーパイプで上手に喫煙すると、ほとんど異味の混入はしない、こんなところはブライヤーパイプの優れたところだ。
しかし数は少ないながら、クレイパイプやメヤシャウム、木製パイプを経験した限りでは、筆卸からパイプが馴染むまではそれなりにパイプ素材由来の異味は混じる。
この辺りは、「ブレイクインの完了」をどこにするかと言った事につながる事だ。

この異味の混入、激着香のタバコばかり吸っていると気づきにくいが、ヴァージニア・ブレンドを吸っていれば比較的初期段階で気づけるものである。
今回はコーンパイプを例に上げるが、コーンパイプでヴァージニア・ブレンドを喫煙していて、チャンバー付近が高温になった場合、タバコの味わいとは別の、コーンを思わせる香りが混じる事がある。
また、喫煙終盤になるにつれ、シャンクの楓が熱せられると、木質系の香りが混じり始める。
この様に、タバコに異味が混じり始めた事に気づいたら、喫煙を中止するなり、強く吸い過ぎていた事を自覚し、ユックリでより慎重な喫煙に切り替えるなどの対処が必要となる。

最期に、それ以外の香りで、たまに経験するものを紹介しよう。
つい最近の事だが、恥ずかしながらブルドックの底を焦がした。
その時は、鉛筆の芯を思わせる香りが混じったのだが、それに気づいていながらも、ウッカリ喫煙を続けボウルの底を熱くさせた。
灰を落としてチャンバーを確認したら、底に付いていたカーボンが白っぽくなってエグレていた。
再度カーボンが付くまで、細心の注意が必要だ・・・・・・。
ここで結論。

「パイプを美味しく吸うと言う事は、タバコの味に異味が混じらないよう、最期まで吸いきる。」と言う事になるが、それはすなわちパイプにダメージを与えない喫煙と同義になる。
これが、タバコを美味しく吸う為の喫煙技術と、パイプを焦がさずに喫煙する事の関わりを表したものである。
この辺りの感覚は、丈夫なブライヤーより、粗悪なコーンパイプの方が分かりやすい、コーンパイプを喫煙技術のチュートリアルにした理由の一つがここにある。


次号へ
一つ前に戻る
目次へ戻る

トップページへ戻ります 1つ前にページへ戻ります メニューページへ

未成年者の喫煙は禁じられています。
あなたの健康を損なうおそれがありますので、吸い過ぎに注意しましょう。
喫煙マナーを守りましょう。タバコのフィルターは自然界では分解しません。

ホームページ上の全てのファイルは、リビングショップ安藤(有)に帰属します。無断で、使用する事を禁じます。
L.S.A(リビングショップ安藤)ホームページ
Copyright (C) LivingShopAndo All Rights Reserved