第三章

5.タバコの味を変えた加熱式煙草


2013年~2016年にかけ、次々と販売が拡大した加熱式煙草であるが、若者や高所得者を中心にかなり浸透してきている。
かく言う私も、新型コロナが蔓延した2020年、加熱式タバコを購入する事になった。
新型コロナは呼吸器系の感染症である、こんな折りなので呼吸器に優しい喫煙を考えた訳である。

結論として肺喫煙、いわゆる煙草を飲むと言う行為だが、現在はプルームテックにその役割を担わせている。
それ以外は原則、ふかしとなっている。
ただしプルームテックは、プロピレングリコールとグリセリンのリキッドなので、ただの水蒸気を吸っているのと大して変わらない、プチ禁煙しているようにも見える。
しかし以前から、特殊喫煙であるパイプとシガーに関しては、煙草を飲む事はせず、香りと味わいを楽しむ事を主にしていたので、劇的に喫煙環境が変わった訳でもない。


まあ、私の喫煙事情は置いておくとして、周りが次々と加熱式煙草に鞍替えして行く中、時折こんな声を耳にするようになった。
「長年煙草(シガレット)を吸ってきたが、紙巻きは煙いだけで全然美味しくない。
よくこんな不味いものを吸っていたものだ。」

これは、加熱式煙草でタバコの本来の味を知った喫煙者の言葉だ。
もっとも、この発言をした喫煙者は、シガー・バーで葉巻を体験済みであるが、この辺りに前言の原因があるようにも見える。
それは兎も角、まずは最初に加熱式煙草のメカニズムについて、触れて行こうと思う。
まずは高温式から。
高温式、これはアイコスやグローなどが分類されるが、電熱による発熱により、煙草葉から香りや旨みをいぶり出す事により、喫煙するのがこのタイプだ。
これを科学的な手法で解説してみよう。

タバコ葉はタバコ特有の成分「ニコチン」の他に、様々な香りや味わいの成分を含有している。
この煙草葉に含まれている香りや旨みの成分だが、沸点はおおよそ100℃~300℃近辺に集中していると言われている。
従って、喫煙を楽しむとはこれらを気化させて抽出する事によって行われている。
もう一つ分かりやすく説明すると、煙草葉に含まれる味わいの成分は固体もしくは液体であるので、これを沸点以上の熱により気体、すなわち煙にして抽出する事で、喫煙と言う楽しみ方で味わう事ができるようになると言う事だ。
このように、喫煙を科学的な視点から分析する事により、喫煙と言うものが整理されて行くと共に、喫煙に対する新たな地平まで見えてくる気がする。
煙草葉を燃やすことなく煙を発生させる加熱式煙草。
この視点から分類すると、「加熱式煙草は電熱を媒介にした熱により味わいの成分を発生させる煙草」である。
では従来の喫煙は何か。
それは、「煙草葉そのものを燃やす事により発生する熱を利用し、味わいの成分を気化させる喫煙」と言う見方に変わる。

従って、電熱による喫煙である加熱式煙草、およそ300度と言う煙草葉が燃える手前のギリギリの温度である為、煙を出す媒体となるシガレットは若干焦げる程度である。
これに比べ従来の煙草は、燃焼による熱により煙を発生させている。
ここに加熱式煙草と従来の煙草に大きな違いが出てくる。
いままでの喫煙は、「火を点けて吸うもの」と言うのが一般的な概念だった。
しかし、加熱式煙草の登場でこの概念は大きく変貌する。
それが、「喫煙とは、燃焼する手前の高温により、煙草葉から香りや旨みを抽出するもの」である。

ここで、煙草葉を燃やして行われる従来の喫煙を検証して見よう。
まずは、煙草の燃焼温度から。
一般的なシガレットであるが、煙草の火はおよそ800℃とされている。
これに対し、煙草に含まれる香りや旨み成分は100℃~300℃で抽出されるが、ここで問題が生じる。
煙草の成分抽出に必要な温度、これを大きく上回る煙草の燃焼温度であるが故に、香料や旨み成分そのものも燃焼させ始めてしまうらしい。
(以前ネットで、500~600℃から、香り成分が壊れ始めると読んだ記憶がある。)
すなわち喫煙に不可欠な「煙草の火」によって、煙草の香りや旨みが破壊されてしまうと言う矛盾だ。
これが先の喫煙者の言、「今まで長年煙草(シガレット)を吸ってきたが、紙巻きは煙いだけで全然美味しくない。」に繋がる。

ここで問題となるのが、パイプ喫煙特有の演出である煙だ。
いささか無味乾燥的な表現になるが、喫煙を科学的に分析すると「気化した香りなどの成分を味わう物」であり、その他の煙はただの副産物に過ぎないと言う事になる。
もっとも、「パイプ喫煙の空間演出」から見た場合、喫煙にとって煙は重要な要素である事には違いないが・・・・・・話を戻そう。

では、煙が副産物であるとすると、何が喫煙に必要になるのか。
その回答はズバリ「水蒸気」である。
煙草の旨みと香りの正体が「味わいや香りが沸騰して生じたもの」と言う事であるのならば、喫煙に必要なものは煙では無く水蒸気と言う事になる。
ここで私が愛用している、低温式の加熱式煙草が登場する。
低温式、これに該当するのがプルームテックになるがこれの喫煙方法は、発生させた水蒸気を、「香料と煙草葉の入ったカプセル」に通す事で行う。
その喫煙の仕組みは、煙草カプセルにある香りや旨みの成分を、水蒸気に吸着させて行うものとなる。
水蒸気、今までパイプ物語などは「ジュース」として扱って来たものである。
このジュース、加熱式煙草では水蒸気の事を指し「喫煙の主体を担う物」になるのだが、パイプ喫煙においてはこのジュースを、「喫煙の邪魔になる物」として扱って来たのが偽らざるところである。
そんな訳で次は、加熱式喫煙の正体である水蒸気と、パイプ喫煙時に生じるジュース、これに焦点をあてて話を展開して行こう。


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