第三章

6.加熱式煙草と水蒸気


パイプ喫煙と発生するジュース。
以前であればこの問題は、喫煙技術の一つ程度にしかとらえていなかった。
しかし加熱式煙草の登場により、喫煙時に発生する水蒸気、いわゆるパイプ喫煙におけるジュースであるが、これに対する考え方と、喫煙におけるウェイトは大きく変化した。
それは、「水蒸気の存在こそがタバコを楽しむ事の王道」と言って良い程に。
この辺りは「5.タバコの味わいを変えた加熱式煙草」の、味わい発生のメカニズムについてで触れた。
しかしこのタバコ葉から旨みや香りを発生させる事、すなわち「水蒸気の発生」は、加熱式喫煙においては機械的に、それこそ自動で行おこなわれる。
しかしパイプ喫煙において、水蒸気を正しく効率良く発生させる為には、巧みな喫煙技術が必要となる。
この辺りがパイプ喫煙の楽しみになる訳だがしかし、「水蒸気によって、味わいがどの様に伝えられるのか」と、「喫煙技術によって、如何に水蒸気を発生させるか」を混同すると、どうしても論点がボケてしまう。
従ってここでは、純粋に水蒸気と味わい、もしくはジュースと喫煙についてに絞って、言及して行きたいと思う。
理由の一つは「加熱式煙草 低温式」の存在と、この章の最後に書く予定の探検記の題材、コーンパイプが絡んでくるからだ。
宣伝は置いておくとして、早速タバコの味わいと水蒸気(ジュース)に関する事例を列記しながら、それに基づいて検証をして行こう。


まずは加熱式煙草(低温式)の話題から。
低温式の加熱式煙草だが、この方式の味わいの抽出は、まずは機械により水蒸気のみを発生させるところから始まる。
次に、その水蒸気を煙草カプセルを通す事により、タバコの粉末に含まれる、旨みや香料を吸着させる事で喫煙を可能にする。
試しに、カプセルだけを吸ってみても、カプセル無しで水蒸気だけを吸ってみても実に味気ない。
そこはやはり、水蒸気に香りや旨みを吸着させるのが吉である。
これから見ると、加熱式煙草の主体は水蒸気と言う事になる。

次にパイプの話題だが、昔ネットで見たのが「パイプ喫煙は、日本の梅雨みたいなジメジメした所よりも、西洋の様にカッラとした所で吸った方が旨い。」と言った意見だ。
これは、「パイプを楽しむ為には湿気が邪魔をする。」と言った主張である。
確かに、カッラとした気候で味わうパイプタバコは、何かメリハリが効いた味わいを楽しめるようなイメージはある。
実を言うと、「湿気とタバコの味わい。」については、その昔実験してみた事がある。
もっとも実験の動機は、テレビでよく見かける「温泉につかりながら、桶で徳利(日本酒)を浮かべる」にあこがれたもので、これと同じ事をパイプ喫煙でも出来ないかと言う、ただの遊び心だったのはここだけの話だ。
しかし、「お風呂でパイプ喫煙」を試した結果は散々だった。
原因は、パイプの煙に含まれる香りや味わいのほとんどを、お風呂の湯気が吸着してしまい、折角のパイプ喫煙が味も素っ気もないものになってしまった事にある。
これなどは、湿気や水蒸気が喫煙の邪魔をした例であると共に、海外のカラッとした気候の方が、パイプ喫煙は美味しく楽しめる事の根拠とのなる結果だろう。

確かに、様々なパイプを経験して思う事だが、パイプは重く感じる物より、軽く感じる物の方が、軽快にタバコを楽しめると言ったイメージはある。
これは多分、煙に含まれる余分な水分(ジュースの原因?)を、適度に除いてくれるパイプの方が、タバコを楽しめると言う事だと考える。
それが為に、パイプ喫煙の作法に「喫煙した後は、パイプをしっかり掃除し、ボウルを下にしてラックで一週間程度休ませる。」と言ったものがあるのだと思う。
確かに、このパイプの作法を守り、掃除をしてしっかり乾燥したパイプで吸う(一発目の)喫煙が、最も美味しく感じる事もしばしばだ。
他にこれと同じような理由で、人気のあるパイプもある。
それは、かの有名なダンヒル。
ダンヒルのパイプなどで見られる特殊な処理、「オイル・キュアリング」したパイプ(確かにダンヒルのパイプは総じて軽く感じる)、パイプタバコが美味しく感じると言う理由で、買い求める人も多いと聞く。
かく言う私も、仕上がりが良質で軽く感じるサンドブラストのパイプが、結構お気に入りである。
これらのパイプで吸うと、何かタバコをカラッ楽しめる様な気がする。
これらは全て、「タバコの味わいと発生する水蒸気の関係」を表していると思うが、これに良く似た事を葉巻の世界でも耳にする。
それが、「乾燥しすぎた葉巻は辛くなり、過加湿になった葉巻は味わいがボケる。」である。
従って葉巻、特にプレミアムシガーに関しては、葉巻を良い状態で美味しく楽しむ為、「最適な温度と湿度」で厳重に管理するのが作法である。

さて紙面も詰まってきたので、パイプ喫煙と水分の関係これを最後とするが、ここでコーンパイプが登場する。
昔から、「コーンの香りがする。」「タバコが美味しく無い。」などと、粗悪品扱いを受けているコーンパイプだが、現在計画している『コーンパイプ探検記』において、コーンパイプを喫煙技術のチュートリアルに使用する事を予定している。
これは、「決して作りが良いとは言えないコーンパイプでも、喫煙技術が一定の水準に達すれば、十分にタバコを楽しめる。」と言う考えによるものだ。
ただし、ただしが付くがコーンパイプ喫煙では、喫煙技術の他にも「タバコが美味しくない理由」が存在すると考えている。
それが、「タバコの味わいと水蒸気」に深く関わる、それをこれから書いてみよう。

現在は『コーンパイプ探検記』執筆を目指し、複数のコーンパイプを使い倒している。
そこで気づいた事がある、それが下記だ。

「コーンパイプはその構造上、水分の吸収が良いので、ジュースの発生がさほど気にならないと言うアドバンテージはある。
ただしその反面、煙の水分が吸収され過ぎると、煙や味わいがスカスカになりがちになる。」

コーンパイプはトウモロコシの軸を圧縮し、それにカエデなどの木製シャンク(煙道部)を刺して作られているが、素材の性質上水分の吸収はブライヤーパイプよりも強い。
私がコーンパイプを使い倒していて、タバコの味が悪いと感じる一因は、この水蒸気の過吸着ではないかと感じている。
火種によりタバコから発生した煙と水蒸気(旨みや香りが気化したもの)、この中から水蒸気のみを木製シャンク(煙道部)が強力に吸着する事により、旨みと香りが抜けたスカスカな煙になる。
これが、コーンパイプが美味しくないと言われる最大の原因ではないかと考えている。

これは、パイプ喫煙と水蒸気の関係を表す良い例だと思うが、この様な視点からコーンパイプを見て行くと、パイプ喫煙技術を学ぶ為の良いチュートリアルになるのではないかと感じる。
そんな訳で、『コーンパイプ探検記』を楽しみにしておいてほしい。
宣伝はこの程度にしておいて、結論を急ごう。

パイプ喫煙と水蒸気の関係だが、「乾きすぎず湿りすぎず、香りと味わいのバランスを考えながら楽しむ。」、これがベテランスモーカーの腕の見せ所と言う結論となる。
お後の支度がよろしいようで・・・・・・

と、こんな所で終わる訳にはいかない、実はコーンパイプの検証から、もう一つ気付いた事がある、それは次で紹介する事としよう。

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