第二章

5.時間と空間の演出


タバコの栄枯盛衰で、紙巻・葉巻・パイプと取り上げて来たが、この物語はあくまでも「パイプ物語」である。
したがって、寄り道的にタバコそのものを話題にして来たが、今回はパイプの話題一本に絞って行く。
早速であるがここではパイプの魅力を、「時間と空間の演出」と言う切り口で展開して行こう。
ただしパイプ喫煙と時間については、第一章パイプと執筆生活の中で取り上げた。
従って今回は、「パイプ喫煙と空間の演出」の話題からとなる。


さてまずは、初代『パイプ物語』の「香りを楽しむ、味わいを楽しむ」のところでも取り上げたが、著名人の話題から。
もう忘れてしまったかもしれないが、その昔大人向けのテレビ番組11PMの司会としても有名だった藤本義一氏、愛煙家としても知られていた。
当時、彼はとある喫煙のサイトに、次のようなコラムを書いていたと記憶している。
「喫煙の楽しみの特徴は、五感を刺激するところにある」
五感を刺激する、当然そこには嗅覚と味覚の刺激について触れられていたが、それとは趣を異にするように、「視覚に対する刺激、楽しみ」についても言及されていた。
確か「喫煙を楽しむ中で煙が重要な役割を占めている。立ち昇る煙を眺める事は、暖炉の前で揺らめく炎を、飽かず眺めているようなものだ」そんな内容だったと思う。
そんな中でも特質すべきは、藤本義一氏本人が実際に暗闇の中での喫煙実験を行っていた事だ。
何でも実験の結果は、「煙が見えない事が如何に喫煙を頼りないものにするか」だったようだ。
まあ、これについては私もパイプで試してみた事があるが、正直なところ真っ暗なところでパイプをふかした場合、煙が出ているのか出ていないのかさえハッキリと認識できない為、ことのほか喫煙し難かった事を覚えている。

これらの実験の結果を踏まえ、喫煙にとって煙の存在が如何に大切かがわかっていただけると思う。
さて、この辺りで私の言わんとしている事が、皆様にも朧気ながら見えてきたのではないだろうか。
そう、喫煙と言う嗜好品もしくは文化は、「煙によって作り出される空間」が大きな意味を持つという事だ。

確かに、パイプ煙草は旨いものである。
漂う香りに口に広がる旨味。
ネットリしたヴァージニアの煙に、ザラつき感のあるバーレーの煙。
オリエントは・・・・・・
そうだな、軽い煙と言った雰囲気か。
パイプをくゆらしている落ち着いた時間に、煙をころがしている時の充実感。
はたまた、人によっては肺喫煙で煙を胸に満たした満足感や、そののど越しを楽しむ人もいるだろう。
しかし、これらの楽しみをよくよく観察してみれば、全て煙りを媒介として行っているものとなる。

その昔、私が暗闇で喫煙実験を行った時、これらを証明するかの如く、煙が見えないただそれだけの原因で、喫煙の様々な楽しみが本当に頼りないものに感じた。
そこで思った事が次である。
あらゆる喫煙の楽しみは、「煙の作り出す空間」それを視覚で認識する事で、楽しみの形をより明確にしているのではないかと言う事だ。
口から出る煙、鼻先をかすめる煙、煙の質感と濃さ。
これらを視覚で確認する事により、何をどう味わったら上手く楽しめるのか、そんな心構えをして楽しみを実感しているのではないかと言う事だ。
従って、暗闇で喫煙しても煙が見えない為、何時、何をどうやって味わうかが判りにくく、感覚的に非常に頼りない物に感じてしまうのではないだろうか。
この様に考えて行くと、喫煙は「空間の演出」と言う楽しみを持った嗜好品だと言う事になる。
中でもパイプ喫煙は常に空気を動かし、煙を出し続けながら火のお世話をしてあげないと消えてしまう代物である。
このパイプをくゆらすと言う行為は、他の嗜好品には無い特徴であり、パイプ喫煙が「常に空間演出を伴う嗜好品」である事の証とも言える。

しかしこの様に、喫煙の楽しみ方を科学的に分析しなおすと、パイプスモークが「空間演出を楽しむ嗜好品」と言う、希少な存在であるとの結論に達する。
楽しみの中で空間演出に依存する割合の大きな趣味「パイプ喫煙」、もしかすると、飲食物などが絡む他の嗜好品と比べ、よりスポーツに近い存在なのかもしれないなどと思う今日この頃である。
さて話が意外なところに着地したので話題を変え、「パイプ喫煙と時間の演出」に触れて終わりとしよう。


パイプ喫煙と時間について再び言及するが、パイプ喫煙は殊更に時間の束縛を受ける。
ちなみに私は喫煙時間の目安を、「パイプに詰められる煙草のグラム数」で付けている。
そう言えば以前、「喫煙時間の調整を、詰めるタバコの量でする」などと書いた事があるが、厳密に言うとこれは間違いである。
あくまでも理想論だが、「パイプとチャンバー(大きさとテーパー度)に合わせ、最も相性の良いタバコを、最も適正な量で詰める」、これが真にパイプ喫煙を楽しむ妙諦になるが・・・・・・
正直これは「パイプスモーカーにとっての永遠のテーマ」みたいなものだ。

小難しい事は兎も角、現在の喫煙時間調整であるが、パイプの選択で行っている。
次の三本は「煙草重量2g以下」のパイプ達で、一時間以内に喫煙を終わらせたい時用だ。
ところで中にコーンパイプが一本混じっているが、これは今計画中の読み物「コーンパイプ探検記」の準備で、使い倒している最中だ。
なお、コーンパイプは刺さっている軸の関係で、見た以上にチャンバーの底が浅い。
しかもカーボンの付きも早いようで、チャンバーが狭くなり詰められる煙草はすでに2gを切っている。
詰められる煙草の量はせいぜい1.7~1.8g程度、喫煙時間にして40~50分と言ったところか。
ただし、それなりに使いやすく重宝している。

小さなチャンバーのパイプを紹介したので次はスタンダードなパイプになる。
喫煙時間は1時間前後のものばかりになるが、詰められる煙草の量は2.5g~3g前後までとなる。
喫煙の効率やら、煙草を美味しく味わう事などを考えると、このクラスのパイプがもっとも無難だと思う。
何故なら、私の拙(つたな)い経験からすると、「チャンバーが大きくなれば成る程、喫煙が技術的に難しくなると同時に、喫煙効率が落ちる、すなわち煙草に対する燃費が悪くなる」からだ。
また、パイプも葉巻と同じで、喫煙後半ほど煙草感は強くなる。
たぶん、煙草葉の中を煙が通る事により、より煙草(ニコチンなどか?)が強くなる事が原因だと思うが、大きな葉巻も大きなパイプに詰められた大量の煙草も、喫煙の後半かなりキツくなると感じる。

ちなみに次の4本はいずれも4g以上詰める事が可能なパイプで、日曜日などに時間を掛けてユックリ楽しむ時用である。
中でも奥から二つ目の丸っこい形のパイプであるが、チャンバー径は26mmもある。
その昔、喫煙仲間から聞いた「ヴァージニア煙草を真に理解する為にはチャンバー径は25mm以上は必要だ」を検証する為に探し求めた一品である。
肝心の詰められる煙草の量だが、5g以上にもなるのだが、チャンバーが広すぎて上手く喫煙するにはそれなりに技術が必要だ。
また燃費も悪く、かなり注意しながら喫煙しても私の腕では2時間前後しか持たない。
そう言えば、GLピースのヴァージニア系ミクスチャーを吸った時、素材タバコの味わいが別々(バラバラ)になってしまい、せっかくのブレンドが台無しになった事を感じたのもこのパイプである。
取り回しや燃費を考えると、使い勝手が良いとは言えない、かなり使用目的が限られるパイプだと思う。
それに比べ小さ過ぎるパイプだが、これもあまり良い印象が無い。
それは煙草を楽しめる時間が短いとともに、煙草そのものを楽しむ為にはやや力不足だと感じるからである。
従って詰めれる煙草の量が1gを下回るようなパイプでは、落ち着いて喫煙をするには、時間的にも味わい的にも厳しいものがある。
やはり文化的時間を落ち着いて過ごす為には、スタンダード前後のサイズはほしいところではある。


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