第二章

3.仕事と喫煙


初代パイプ物語にも書いたが、私の喫煙はパイプから始まっている。
では何故シガレット、紙巻きタバコを吸うようになったのかと言うと、その原因は仕事がらみと言うほか無い。
喫煙を始めた当時、見よう見まねでパイプ喫煙をしていたが、さすがに職場や人前で吸うのは、はばかられた。
ムーミンパパを気取るには年齢が若すぎたし、ポパイを真似ようにもホウレン草の缶詰が手に入らなかった、そんな理由で人前でのパイプ喫煙を控えていたのはここだけの話である。
冗談はさておき、「パイプスモーク 時々 シガー」から始まった喫煙生活であるが、最も頭を悩ませた事が他にあった。
それが「就業中の眠気」である。
仕事で忙しく動き回っている時ならいざしらず、デスクワークになるとどうしても、眠たくなる時間帯は訪れる。
さらに、堂々巡りの会議に、子守歌より下手くそな話ときては、寝るなと言うほうが無茶である。
しかし仕事と眠気、事務仕事だけに止まるのであればまだ可愛い。
成人となり社会へ出、免許を取得するとなると、仕事や通勤での車の運転と言う大きな壁が存在する。
何でも死亡事故に到る交通事故、その内の約四割は居眠りが原因と言われている。
たかが居眠りと言うが、これが居眠り運転ともなると命に関わる重大事だ、運転中眠くなってヒヤリとした経験をお持ちの方も多いことだろう。
そう、私がシガレットを始めたキッカケはまさに眠気対策の為であった。
確か梅田晴夫の著書『Theパイプ』の中で、天正時代のタバコの文献と紹介されているものに、「めざまし草」と言うのがあったと記憶しているが、タバコは合法的な眠気覚まし、ボオッとした頭をシャッキリさせる嗜好品と言ってもそれほど間違ってはいない。
そんな理由から始めたシガレットだった為、当初缶ピースやらショートホープやらの、かなり強いタバコを吸っていた。
その甲斐もあり若い頃は、運転や会議でかなり無理が効いた記憶がある。
以上は、仕事と喫煙の一面を切り取ったものであるが、仕事と喫煙の本命はそこではない。

さて、前置きが長くなったが本題に入ろう。
喫煙者優遇社会の要素その二、経済の時代とマスマーケティングについてだ。
「2.肩身の狭い喫煙者」のところで少し触れたが、ここでは喫煙と仕事を、時代と統計の切り口で検証して行こう思う。
それでは、最も喫煙率が高かったと思われるデータを再度掲載しよう。

1965年の喫煙率

男性(成人) 82.3%
40代 86.7%
30代 84.7%

平均年齢 1950年 男 58歳
1960年 男 65歳

国民年金導入  1959年 

定年年齢      55歳

これらのデータから見える結論は一つ。
高度成長経済と言われた時代、日本の企業や社会を支えた人材の大半が、喫煙者だった事実である。
男性の平均寿命が65歳で定年が55歳。
当時は今よりずっと男性中心だった事を考えると、社会をになう人材は、30代から40代の男性であり、その喫煙率は85%を越えていた。
しかも、「24時間戦えますか」などと言うCMさえ流れ、生き馬の目を抜くとまで揶揄された競争社会である。
こんな異常な社会において、場所を選ばず一服できるアイテムであり、合法的な眠気覚ましであるシガレット、こんな便利な嗜好品が市民権を得ない道理は無い。
昨今は電子タバコや、それにまつわる小物がブームを呼んでいるが、タバコが仕事に役立つ便利な嗜好品である事を、裏付けている証拠の一つではないかと考えている。
話が脱線したので戻すが、以上の理由によって「喫煙者優遇社会」は、一般社会の中心を担っていた人たちの手により、形作られたものだったと考える。
何せ、会社の柱である30歳から50歳までの喫煙率が85%越えである。
社長をはじめ、専務も部長も課長に到るまで喫煙者だ、会社も部下も忖度するでしょう。
一時期の喫煙者優遇社会を作り出したのは、まさにこの世代と言って間違いはない。

では何故、何が一体85%を越える喫煙率を生み出したのか。
この社会現象を生み出した裏にある事実、それが「マス・マーケティング」だと考える。
なお当時の社会風潮を最も的確に表した標語が、「巨人・大鵬・卵焼き」、一時期「一億総中流社会」と語られた時代であり、誰もが一斉に同じ方向に向いた時代だった。
歌と言えば美空ひばり、俳優と言えば石原裕次郎、大晦日と言えば紅白歌合戦、流行が極端に均一化した時代。
こんな社会の流れに乗っかり、否、流れを意図的に作りだし、商売にしたのが大企業によるマス・マーケティングだったのではないかと勘ぐっている。
より良くより安い価格で、蛇口を捻ると出るが如く、商品が消費者に行き渡ることが幸福である、それが正しかった時代。
大量生産と大量消費を、日本や世界が目指した時代である。
画一化された製品が湯水の如く社会に広がり、一般大衆の多くがそれを日常的に使用する。
その産業戦略に上手く乗っかったのがシガレット、いわゆる紙巻きタバコだったと考える。
話がまとまらなくなったので無理矢理結論づけるが、戦後の一時期に訪れた喫煙者優遇社会は、マス・マーケティングを仕掛けた企業と、高度成長経済が上手くかみ合い、偶然にできた社会現象に過ぎなかったのではないかと言う仮説である。
従って、我々喫煙者が「最近ますます肩身が狭くなって」などと感じるのは正しいあり方ではない。
もともとがほんの一時期、「世の中の大半が喫煙者と言う異常なブーム」に乗っかり、喫煙者優遇社会を皆に押しつけて来ただけに過ぎない。
以上が「ニュートラルな立場から見た喫煙を取り巻く現実」だと考える。
すなわち、喫煙を目の敵にするファシズムとも魔女狩りとも取れる禁煙運動。
これは、タバコ離れの時代と言われる平成が「喫煙そのものが、本来あるべき姿に戻ろうとしている」時代だったに過ぎず、結果揺り戻し的な極端な禁煙風潮を生んでいる原因となっているのではないかと考える。
さて、あまりまとまっていない上に、結構端折った話になったが、以上が喫煙者優遇社会を創ったのが、経済の時代でありマス・マーケティングだった説明である。
では次に、戦争の時代がシガレットを生み出した事を、タバコの栄枯盛衰を整理しながら検証して行こう。


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