第一章
4.パイプ喫煙と時間
 

さて「パイプと文化」では、パイプ喫煙を充実させ長続きさせるコツは、「如何に文化的生活を営めるかに掛かっている」と言う話で落ち着いた。
文化的生活と一口に言うが、読書にしろ音楽鑑賞(得にクラシック音楽)映画鑑賞にしろ、ユックリくつろげるだけのまとまった時間が必要となる。
音楽鑑賞、クラシックを例に取れば交響曲で所要時間は一時間前後。
映画鑑賞や読書を例に取れば、映画一本を鑑賞する、本の一章程度を読む、これらにだいたい一時間半から二時間程度が必要となる。
文化的生活を営む為の、必要な時間を幾つか挙げてみた訳だが、パイプ喫煙との相性の良さが浮き彫りとなる。


これはあくまでも私個人の基準となるが、パイプ喫煙の標準を一時間から一時間半としている。
これはミディアムサイズのビリアードまたはベントのパイプに、フレイクタイプのヴァージニアタバコを詰めた時の喫煙時間となる。
ここを基準として、一時間以内で納めようと思った時には小ぶりのアップルやブルドック。
もしくは燃焼が良いミクスチャー、例えばラタキアタイプや着香物を、ややユル目に詰めて喫煙する。
また、日曜などのタップリ時間のある時には、オームボールや大ぶりのパイプを選択し、ヴァージニアのフレイクをシッカリと詰める、これで二時間近くは楽しめる。
様々なシチュエーションに合わせたパイプを所持しているだけで、40分から二時間近くまで、ユッタリと自分の時間を楽しむ事ができる。
これはパイプ喫煙を、所用時間と言う切り口で見てみた場合になるが、ともかくパイプ喫煙が如何に文化的生活を楽しむのに適しているかが分かる。
もっともパイプに対する知識、パイプタバコに対する経験、喫煙技術の蘊蓄、これらの知識を喫煙に統合する見識などの、スキルが高ければ高い程充実した時間をすごせるものであるが・・・
まあこれは、チョット誇張が過ぎる言い方ではあるが、パイプ喫煙と言うもの、求めれば求めるほどそれに答えてくれる奥の深さと、度量の広さを持っている文化である。


また、文化生活が根付くと共に、不思議とパイプ喫煙も堂に入って来る。
こうなるといよいよ、パイプ喫煙の奥の深さが分かってくる。
私の場合も最初の頃は、パイプコンテスト優勝者(ロング・バーニング)の言、「パイプ喫煙が美味しく感じるのは30~40分位まで」を、その通りだと思っていた。
確かにパイプも葉巻同様、後半になる程タバコ感やニコチンなどが強くなる。
良い表現をすれば「ビター」、悪い表現を混ぜると「香り立ちや繊細な味わいが少なくなり、雑味と強めのタバコ感が出てくる」。
正直なところ、パイプ喫煙の後半部になるに従い、こう言った味わいになってくるのも確かだ。
それに比べ喫煙の序盤は、タバコ葉のフィルター効果もあるのだろう、着香の匂い立ちも、タバコの旨味のピュアさ加減も良い。
しかし、最近では「喫煙の終盤戦も捨てがたい」と思っている。
純粋にきつめのタバコ感のある煙を安定してくゆらす、煙を転がしていると表現しても良いが、こう言った喫煙を満喫できるのも、パイプ喫煙の楽しみと言って良い。
じっくり煙を転がした後、灰皿にパサリと灰を落とす。(このパサリが重要、ベチャリやボロリは、ジュース管理のまずさや吸いきれていない証拠である)
ここまで来て始めてパイプ喫煙の完成である、一日の文化的生活を満喫した瞬間とも言える。
この感覚だけは、葉巻でもシガレットでも味わえないところである。
マウスピースと言う「咥える為に作られた器具」と、火皿(チャンバー)で火種を維持し続ける為の技術「吹き戻し」、これらがパイプ喫煙のみに許された「くゆらす」と言う時間を作り出してくれる、ここがパイプ喫煙の醍醐味と言っても良い。
なお、ここまでシッカリ吸いきる事は、パイプメンテナンスの観点からもお勧めである。
所用時間にして一時間半程度。


さて、ここまでは「文化を楽しむ立場」からパイプ喫煙を見てきた訳だが、ここからは立ち位置を変えてみよう。
それが「文化を創造する立場」からのパイプ喫煙だ。
これは私事で恐縮だが、今まで趣味の範囲内ではあるが、それなりに創作活動を楽しんできた。
20代の若い時分は音楽。
ちょうどこの頃、統一規格のパソコン、MSXシリーズが脚光を浴び、楽器メーカーからも音楽制作用に特化したモデルが登場した。
パソコンに音源(シンセサイザー)、キーボードにマルチトラックレコーダーなどの機材まで揃え、何曲か録音もした。
作詞・作曲・編曲・歌・録音までを一人で行う、いわゆる打ち込みと言うスタイルだ。
ちょうどこの頃だった、MSXのワープロソフトを買って執筆の真似事を始めたのは。
記憶媒体がカセットテープだった頃の話である。
そう言えば、チョットしたゲームを立ち上げる時にも、データのダウンロードで10分前後掛かっていた、懐かしい時代である。


話がタイムトラベルしてしまったので戻すが、文化を楽しむ立場と、文化を創作する立場、その間にある決定的違いは何か。
それが「時間」である。
確かあれは中学の頃だった。
一時SF小説にハマリ、学校の図書館にあるSF小説を総ざらいした事があるが、二日で一冊のペースで読破して行った。
学校の図書館においてあるSF小説の数などたかがしれている。
三ヶ月立たずして、借りる本がなくなった事を思い出す。
そんな経験もあり、パイプ物語やこの度出版した予言系ファンタジー「2048年神々の設計図」を執筆して実感したのが、「読み手として楽しむよりも、書き手として楽しむ方がより長く楽しんでいられる」だ。
たかだか一冊の本を書き上げるだけであるが、専業作家でもない我々には年単位での時間が必要となる。
読書によりSF小説の世界に没頭し、思考を夢の世界に羽ばたかせるのは確かに面白いが、この楽しみは言い換えれば、ジェットコースターに乗っているようなものである。
スリル満点ではあるが、一時(いっとき)の楽しみでしかない。
それに比べ創作の世界は、極めて牧歌的であり、より長く想像の世界に遊んでいることができる。
そんな訳で、今回はパイプスモーカーにとって、もっとも相性が良さそうな作家の文化、すなわち執筆生活をお勧めする。
それでは幾つか、執筆生活を送るためのコツを紹介して行こう。


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