32.パイプ入門(パイプ編1)

パイプ入門も「技術・煙草」と紹介し、最後は喫煙具すなわちパイプの解説となる。

 

パイプ喫煙の最大の特徴が「喫煙具の使用」である。

 

他の喫煙が、吸い殻が出るのに対し、パイプ喫煙は灰しか残らず、まことにSDGsな嗜好品である。

 

その代償と言っては何だが、喫煙具の清掃管理や慣らし等、パイプを育てて行く必要がある。

 

まことに手間も暇も掛かる嗜好品ではあるが、それだけに生涯の友と言える程に、長く楽しむ事ができる。

 

何より、技術さえ身につければ、高々3グラムにも満たない煙草で、1時間以上楽しむ事ができる。

 

これほどコストパフォーマンスの良い嗜好品は、そうそう出会える事は無い。

 

パイプ物語3もいよいよ大詰めとなり、パイプの話題となるが、あくまでも目的は「煙草を美味しく楽しむ為」であり、これをベースにして解説する予定だ。

 

話の展開は、お得意の手法「アンチテーゼの提示」だ、主題は「グルメは引き算」。

 

ただし、このグルメの引き算は、「パイプ喫煙の上級者編」に該当すると考えている。

 

ここでパイプ喫煙の基準、目安を初級編から上級編まで列記すると、次の様になる。

 

初級編「煙草を上手に燃やす」

中級編「煙草から旨味と香りを上手に引き出す」

上級編「パイプによる引き算を考え、好みの煙草に仕上げる」

 

従ってパイプ喫煙上級者とは

 

「様々な煙草に対し、味わいを計算し、パイプと技術を選択する事で、より充実した時間を作り出す」

 

こんなスモーカーをイメージしている。

 

では順を追って、パイプ上級者を目指す為のデータを、解説して行こうと思うが、最初が「煙草の味わいの構成要素」。

 

次に、「パイプによる味わいの引き算要素」。

 

最後に、私のつたない経験による、味わい方のケース・スタディー、こんな三部構成を考えている。

 

 

【パイプ煙草の味わいの要素】

 

・グルメは引き算

 

パイプ喫煙における味わいの基本は「引き算」だと考えている。

 

この視点は案外、他のグルメにも応用できると思う。

 

例えば果物、柿や蜜柑。

 

柿はいくら糖度が高くとも、渋が抜けなければ食べられない。

 

渋抜きと言う「味わいの引き算」により、始めて食べられるものとなる。

 

蜜柑なども「風呂に入れて酸を抜くと甘くなる」などと言われているが、これは蜜柑の糖度が上がるから甘くなるのでは無く、酸味が弱くなる事で、相対的に甘さが際だつ事で起こる「味わいの変化」である。

 

こんな事情をふまえ、引き算の視点を加えて煙草の味わいの要素を解説して行こう。

 

 

1.煙草の味わい

 

煙草の味わいとは、煙草葉本来がもっている旨味や甘みの事である。

 

味わいとしては繊細で、熱により壊れ易く、パイプの影響も受けやすい。

 

しかし、味わいの持続性は良く、「タバコ感」と言う観点からすると、中盤から終盤に掛け、ジワジワ強くなって行く。

 

 

2.煙草の香り

 

煙草の香りとは、原料葉がもつ煙草本来の香りである。

 

味わいに比べ分かりやすい。

 

ラタキアを筆頭に、ピュア・キャベンディッシュにペリックなど、香りはそれなりに分かるものである。

 

ただし、タバコ感が強くなるにつれ、相対的に落ち着いたものになる。

 

3.ケーシング・ソース

 

ベース煙草やアロマティック・キャベンディッシュ等の、製造過程で使われる香料。

 

分かりやすい味わいの上に、持続性も高い。

 

ただし、タバコ感が強くなるにつれ、落ち着いたものにはなるが、喫煙後半以降も味わう事ができる。

 

4.トップ・フレーバー

 

アロマティック・ブレンドにおいて、「揮発しやすい香り」があると感じている。

 

パウチなどには「最後に○○の香りを加えて」などの表記があるものも散見されるが、どの様な製造工程で添加されているのかまでは、正直なところ分からない。

 

味わいとしては、派手で分かりやすいが、持続性はあまり強くない。

 

喫煙序盤こそ強めに香るが、早い段階で弱くなり、煙草の味わいに馴染んで行く。

 

このような香りを、私はトップ・フレーバーと考えている。

 

効果としては、ベポライズ効果や、「味の変化を演出する」ものなどが考えられる。

(ベポライズ効果とは、煙が煙草を通過する時に、フレーバーを吸着しながら、味わいを強くさせる効果) 

 

ただし、トップ・フレーバーは「香りの減衰」も早いので、フレーバーを楽しみたいのであれば、開封後はサッサと吸いきるのが吉である。

 

 

5.煙の味わい(物理的)

 

煙の味わいには2種類ある。

 

それは肺喫煙の吸いごたえと、煙の口当たりである。

 

まあ、パイプ煙草には肺喫煙に適さないものも多いが、しかし、歴史的な著名人には、肺喫煙者も案外多い。

 

味わいとしては喫煙序盤は軽いが、喫煙が進みタバコ感が強くなるにつれ、煙も強くなる。

 

大振りのパイプなどで、喫煙が一時間半に及ぶと、煙がきつく感じる事もしばしばだ。

 

このタバコ感の増加、ふかす喫煙においては「煙を転がす感じ」になり良いと思うが、肺喫煙では流石に体に悪そうである。

 

 

6.水蒸気の影響

 

「グルメを極める(伝搬編)」で詳しく書いたが、喫煙により発生する水蒸気、味わいそのものと言う訳では無いが、味わいの伝わり方に大きく影響する。

 

葉巻で一般的に言われているのが、「過加湿の葉巻は味わいがボケる。乾き気味の葉巻は辛くなる。」

 

また、北欧パイプスモーキング・ギルドの創立者 ポール・C・オーリックの言

 

「真空の缶の中に密閉されていたタバコは、紙の上に広げ5分か10分寝かす事によって、その味がよくなるものである。」

 

これも、適正な湿度のタバコの方が、美味しい事を表している。

 

なお、「喫煙を終えたパイプを、清掃した後数日間休ませる」事も、湿度、すなわち喫煙によって生じる水蒸気を適正に管理する事につながる。

 

ただし味わいがボケるからと言って、とにかく水蒸気を除去すれば良いのかと言えば、それもNGではあるが、ここから先は「パイプによる味わいの引き算」に深く関わってくるので次でユックリ解説して行こう。


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