33.パイプ入門(パイプ編2) |
「パイプ入門(パイプ編1)」では、「味わいの引き算」を中心にして、煙草の味わいについて解説した。
ここでは、パイプの構造が煙草の味わいに対してどのように影響するのかに視点を移し、簡単に解説して行こうと思う。
とは言っても、所詮は一愛好家のつたない経験によるものだ。
参考程度に読んでいただければ幸甚である。
【 チャンバー(火皿)の形状 】
「チャンバー」和名は火皿、煙草を詰める所である為、煙草の味わいに直接影響を及ぼす部位となる。
まずは、チャンバーの形状と味わいの傾向について書いて行こう。
・太いと細い
煙草の太さで味わいがどの様に変わるのか、葉巻で言われているのが次だ。
太い葉巻はマイルドで繊細な味わいになる。 細い葉巻は繊細さは無いが、キャラクターと味わいは強く出る。
パイプでも同じ事が言え、口径の大きなパイプ程、味わいがマイルドになると同時に、ブレンドされた煙草や香料などを、別々に感じる事ができる。
それに比べ、口径が小さ目のパイプは、「こまけぇ事はいいんだよ」的な味わいになる。
小さ目のパイプになると、ブレンドされている葉煙草の味わいが一固まりとなり、味わいの複雑さは無くなるが、逆にブレンドのキャラクターが前面に出る味わいとなる。
ただし、別途気を付けなければいけない事がある。
それがタバコの刻みとパイプの関係だ。
太めの刻みには太めのチャンバー、細目の刻みには細目のチャンバー、これが原則である。
もっとも、バーレー葉とヴァージニア葉、フレイクとミクスチャー、はたまたブレンダーの意図している味わい方などがあり、一概には決められないが、吸った時味わいに違和感を感じたら、チャンバーの太さを変えてみるのは有効な手段である。
・長いと短い
長いチャンバーの場合フィルター効果のせいか、喫煙序盤では煙草の味わいは弱く出るようだ。 ※フィルター効果とは、煙がタバコ葉を通過する事で、タバコ感がマイルドになる事を言う。
それとは反対に香料、特にトップ・フレーバーはベポライズ効果も相まって強めに出る。
ただし深い(長い)チャンバーは、喫煙の後半のタバコ感は強くなりがちで、終盤キツくなる事も多い。
チャンバーが長いと、それなりに味変が楽しめると感じている。
それに比べ、短めのチャンバーは、フィルターもベポライズも弱めに影響する為、煙草の味わいをダイレクトに楽しめる反面、トップ・フレーバーの際だちも押さえられる。
なお、後半のタバコ感も強めには出ないので、タバコを最後まで灰にするには扱い易いパイプだ。
・テーパーと味わいの違い
チャンバーの形状は概ね、次の三種類となる。
1 テーパーが弱い寸胴型
スタンダードなビリヤードやベントなどは、このテーパーが弱めな寸胴型をしている。
味わいは平均的でオールマイティ。
ブレンドの細かいニュアンスや、使われている原料葉や香料等を探るのに向いていると考えている。
また、あえて適している煙草を挙げるとしたら、ラタキア・ブレンド。
ラタキアの独特な香りと味わいを楽しみたい時は、チビチビと吸うのでは無く、寸胴型のパイプでやや煙量多めにユッタリとふかす、個人的にはこの吸い方が好みである。
2 テーパーの強い逆円錐系型
パイプ形は逆三角形で、ボウルトップが広がっているダブリンやズル等が該当する。
テーパーが強く、煙や味わいが一固まりになり易い。
ブレンドのキャラクターが強くでる反面、原料葉や香料はまとまってしまうので、細かいニュアンスを探るのには適していない。
反面、ブレンダーが意図したキャラクターを味わうのには適している。
パイプ煙草には、原料葉や香料を組み合わせる事で、バーチャル(ナンチャッテ)グルメを再現している物も多い。
こう言った類のブレンドは、テーパーが強めのパイプで楽しむのが吉だ。
3 お椀型(浅めのチャンバー)
お椀型のパイプは、ローデシアンやワイングラス等がこれに該当する。
フィルター効果もベポライズ効果もあまり出てこない為、煙草の味わいをダイレクトに流し込むのに向いていると思う。
煙草の旨味を味わうのには向いているが、香りを楽しむのにはやや不向きか。
なお、タンピングが容易で煙草を最後まで吸いきり易く、ショートスモークに適している等、取り回しは良い。
【 パイプの形状 シャンクとマウスピース 】
パイプには様々なシェイプがあるが、ここではシャンクとマウスピースにスポットを当てる。
それでは早速、味わいの引き算の傾向を簡単に列記して行こう。
1 長いと短い
味わいの引き算は、長いもの程強く出る。
また、シェイプによってはシャンク(ブライヤー)が長いものや、マウスピースが長いもの等があるが、シャンクが長いパイプの方が引き算が強く出やすい。
これは、ブライヤーによる水分の吸収によって起きるのだが、過剰に水分が吸収されると、味わいや香りまで一緒に持ってかれてしまう。
かと言って、水分が吸収されず、全ての味わいがまとめて口に入ると、これまたハッキリしない味わいになり、案外楽しくは無い。
パイプ喫煙においては、何事も程度が肝心である。
2 ストレートとベント
パイプにはストレートとベント(湾曲)があり、「ストレートのパイプより、ベントの方がくわえた時の負担が少ない」と説明されるのが一般的だ。
しかし、味わいの引き算の観点から評価すると、ストレートの方が引き算が少なく、ヴァージニア・ブレンドに向いていて、ベントの方が引き算が強くでる為、ラタキアの独特な香りや、アロマティック・ブレンドの香料を楽しむのには向いている。
3 ベーシック・クラシック・シェイプ
パイプの基本的な形は、19世紀から20世紀の初等に確率される事になるが、これを「ベーシック・クラシック・シェイプ」と呼ぶ。
その数は、代表的なものだけでも30種に及び、喫煙時のシルエットはどれも独特な魅力がある。
ただし、チャンバー形状、パイプの形、マウスピースの形はそれぞれで異なる為、味わいの観点からパイプを選ぶ場合は、味わいの引き算の法則を参考にするのが吉である。
4 素材による違い
パイプの形状とチャンバーによる味わいの引き算について書いてきたが、パイプには味わいの引き算とは別に、パイプ素材の味わいが存在する。
私のつたない経験では、陶器製のクレイパイプ、海泡石のメヤシャウム、マッカーサー元帥でお馴染みのコーンパイプ、これらのパイプは吸い始めに素材の味が出てくる。
正直、味わいとしては異質で、煙草の味わいを邪魔するものにしかならない。
もっとも、クレイやメヤシャウムパイプは入手が困難なので、まあ物のついでの話になるが、しかしコーンパイプであれば普通に手に入る。
と言った訳で最後に、コーンパイプに少しだけ触れて終わりとしよう。
パイプ喫煙は、吸い殻も出ず、キチンと吸えば灰しか残らず、エコな煙草である。
しかし、コーンパイプはさらにその上を行く。
何せ材料が、「捨てる以外に使い道の無いトウモロコシの軸」を、廃物利用したものである。
誠にSDGsなパイプではあるが、それなりに弱点もある。
その一つが、素材の味わい。
ボウルの材料がコーンだけあり、使い始めなどにボウルを熱くしすぎると、コーンの香りが煙草の味わいに混じる事がある。
また、シャンクに使われているカエデ等だが、水分の吸収が良い。
従ってコーンパイプにおいては、ブライヤーパイプの様な「ジュースの発生による障害」は、かなり緩和される反面、煙草の味わいがスカスカ気味になる事がある。
「パイプ入門(パイプ編1)」で、「ただし味わいがボケるからと言って、とにかく水蒸気を除去すれば良いのかと言えば、それもNGではあるが」と書いたが、使い始めのコーンパイプでは、過剰な水分除去による障害が起きやすい。
煙草の味わい自体が、煙草に含まれる旨味や香りの成分が気化したものである、それをガンガン吸着してしまえば、味わいが弱くなるのも道理である。
では、具体的にどんな味わいになるのか私の経験を語ると、「やや気の抜けたサイダー」こんな表現になるか・・・・・・
さて紙面も詰まって来た、パイプによる味わいの引き算も一通り書いたので、次に私が経験をケーススタディーにして終わりと致しましょう。 |
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