第三章

3.パイプ煙草の変遷


その昔、ダンヒルのロゴはdやhの棒がビーヨーンと延びた、独特のブロック体だった。
その特徴的なロゴが筆記体に変わった事があったが、その時ですら「味が変わった」だの「以前の方が良かった」だのと話題をさらったものだった。
しかし悲しい事ながらそのロゴ、今はダンヒルですら無い。
何と「ピーターソン マイミクスチャー965」。
一瞬、何の冗談かと思った事はここだけの話である。
まあ、事情を聞けば、ダンヒル煙草の製造をやめる事になっていたところ、ピーターソンがレシピと販売権を買い取って継続してくれたとの事なので、感謝こそすれではあるが。
もっともダンヒル社自体が、パイプ煙草の製造を随分と昔にやめている事は知っていたので、いつかはこんな日が来るとは思っていたが・・・・・・
まさか、ダンヒルのロゴさえ無くなるとは、パイプ業界の実体が予想の少々斜め上を行っていると言わざるを得ない。
しかも、メイド・インはデンマークである、時代の流れをパイプ煙草の味わいで感じている今日このごろ、いかがお過ごしでしょうか。


と、嘆いていても何も始まらない。
失敗さえもネタにして、笑いを取りに行くのが浪速のお笑い芸人である(微妙に違ってはいるが)。
ここは一つ、現在のパイプ煙草事情を整理しなおし、新たな気持ちでパイプ煙草の情報を発信して行くのが吉である。
では早速、現在のパイプ煙草事情を軽く整理して行く事としよう。

あれはまだ、パイプ煙草メーカーが群雄割拠していた時代の事である。
専売公社であった日本たばこ産業は、桃山から始まり最後のフォレストに至るまで、様々なパイプ煙草を製造していた。
俗に言うイギリスタイプ、アメリカタイプ、ヨーロッパタイプを、全て網羅したラインアップだった。
また、同じ専売公社であったスウェーデン・マッチ社は、ボルクムリーフを製造、洋酒からチェリーまで多彩なバリエーションで楽しませてくれた。
他には、アメリカ煙草の代表ハーフ&ハーフ、その昔(缶物だった時代)アメリカンタバコ社により製造されていたが、缶の表記は「ラーキー・ストライク&バッキンガム・ブライト」であった。
その後、ハーフ&ハーフは箱物(厚紙)に変わるが、表記が現在のバーレー&ブライトタバコになったのはここからだと言われている。
なお、ハーフ&ハーフにはさらに続きがあり、1980年代アメリカンタバコがハーフ&ハーフの製造を手放した為、スウェーデン・マッチ社の傘下に引き継がれる事となる。
次に、昔しからある代表的な銘柄として外せないないのが、オランダのダウ・エグバーツ・タバコ社のアンフォラシリーズ。
フルアロマテックが一世を風靡し、一躍パイプ煙草の代表銘柄に躍り出たのは、寂しいかな昔の話となった。
以上「パイプタバコを言えばこれ」と言った銘柄をいくつか列記した訳だが、何故このアイテムだったのか。
その答えはただ一つ、上記の銘柄は全てデンマーク製造になったパイプ煙草達である。

ちなみに、現在のメイドイン表記は「スカンジナビアン・タバコ・グループ」、ただし、ここでただしが付くが、2021年現在と言う落ちである。

ではその他のパイプ煙草と言えば、かなり古い話になるが、まだパイプ喫煙初心者だった頃にお世話になったストレートアメリカン系統のパイプ煙草、現在日本で購入可能なのはハーフ&ハーフのみ。
古き良き時代の、サー・ウォルター・ラーレ、エジョワース、ボンド・ストリートにミクスチャーNo.79、最後にあのプリンス・アルバート、これら全てが日本では手に入らなくなっている。(製造の有無は未確認)
さらにトドメとなったのがアメリカの勇、マクレーランドの製造終了、全く寂しい限りである。
それに比べ、ラットレイやスリービーなどはドイツ製造。
ダン・タバコを筆頭に、アッシュトンにポッシェル社にフォンアイケン、これらもドイツのメーカーである。
そんなこんなで、ふと気が付いて辺りを見回してみると、誰もが手軽に購入出来るパイプ煙草は、デンマークかドイツ製造のものばかりとなっていた。
パイプ煙草市場は、まさに二強時代に突入したと言っても過言ではない。

もっとも、これらは悲観的な見方ではある。
この程度の事で、諦めるようではパイプ・スモーカーは続けて行けない。
タバコの製造が変わったと言う事を悲観的に見れば、確かに今まで楽しんで来た煙草が変わってしまった、正確に表現すると、全く同じ味わいの煙草が無くなってしまったと言う事になる。
しかしこれを、変化を楽しむと言った立場から見れば、過去のタバコとの比較検証を試してみる機会が訪れた事になりはしないだろうか。
製造国と会社の違いが、タバコの味わいに影響するのか、レシピの再現性はどうか、ベースタバコとの相性は良いのか等、検証する項目はいくつもある。
また、タバコの製造国が変わったと言う事を単純に考えれば、新しい玩具が手に入ったと言う事に他なら無い。
考え方次第では、良いことずくめだ。
そんな訳で、大きく市場が変化した昨今、この際なのでパイプタバコの楽しみ方を変えようと考えた。
何もティスティング等と、肩肘を張った姿勢ではなく、純粋にパイプとタバコとパイプ喫煙を楽しむのも良いではないか。
もっと気楽にタバコを楽しむ、それはまるで「ひとときの旅」を楽しむかの様に。
そんな訳で、次はパイプ物語の新企画について、宣伝がてらに語る事といたしましょう。


次号へ
一つ前に戻る
目次へ戻る

トップページへ戻ります 1つ前にページへ戻ります メニューページへ

未成年者の喫煙は禁じられています。
あなたの健康を損なうおそれがありますので、吸い過ぎに注意しましょう。
喫煙マナーを守りましょう。タバコのフィルターは自然界では分解しません。

ホームページ上の全てのファイルは、リビングショップ安藤(有)に帰属します。無断で、使用する事を禁じます。
L.S.A(リビングショップ安藤)ホームページ
Copyright (C) LivingShopAndo All Rights Reserved