27.パイプ入門(技術編2) |
パイプに煙草を詰め、ここでようやく喫煙できる事となるが、ここから一時間あまりの小旅行が始まる。
快適に旅をする為には、準備以上の作法と手数、喫煙技術が必要となる、しばらくの間お付き合いの程を。
【 パイプ喫煙 本番編 】
用語解説 : タンパー
パイプ喫煙で大切なのが、火をコントロールする技術である。
この時、火の付いた煙草を押さえる道具、タンパーが必要となる。
形状はぶっちゃけ、五寸釘の頭を想像すれば当たらずと言えど遠からず。
なお、タンパーで火のコントロールする事を、「タンピング」と言う。
・火付け
パイプ喫煙の火付けの特徴は「二度付け」だ。
これは満遍無く火と乗せる為の作法だが、快適に喫煙を進めるには必要な行為だ。
さて、パイプ喫煙における火付けの作法を、ロング・スモーキング・コンテストをテキストに解説を進めよう。
ロング・スモーキング・コンテストでは、マッチ二本のみ支給される。
まず一本目では、吸い込みながら満遍なく煙草の表面を焦がす。
この時、煙草が膨らみ盛り上るので、パイプを一端口から離し、タンパーで煙草を押さえながら平らにする。
二本目のマッチでは、黒変した煙草の表面に満遍なく着火し、タンパーで細かく押さえながら火を落ち着けて行く。
(ロング・スモーキング・コンテスト編)
これは聞いた話でしかないが、ロング・スモーキング・コンテスト用の火付けは、全体に火を付ける事はしないそうだ。
一回目の火付けで、煙草を満遍なく黒変させるのは同じだが、二回目の火は煙草の一部に乗せるだけに止める。
この一部分だけに付けた火を、吸い込みや吹き戻しをしながら、細かなタンピングで回して行く(火を次々と延焼させる)。
10分程で火を一周させ、これを何周も行う事で、2時間を越える喫煙タイムを叩き出す。
これがロング・スモーキング・コンテスト上級者のテクニックだそうだ。
・くゆらす
パイプ以外の喫煙は、原則吸うのみで行われる。
しかし、パイプ喫煙においては吹き戻しを行う。
物の本などにはこれを「吸ったり、吐いたり」と書いてあるが、これはあくまでも「口をポンプにして至極ユックリ、空気を入れたり出したりする」事であって、決して「息を吸ったり吐いたり」している訳ではない。
これでは肺喫煙になってしまう。
「パイプをくゆらす」とは、少量の空気を至極ユックリと、入れたり出したりする事である。
なお、吹き戻しが必要な理由は、延焼をコントロールする為である。
吸ってばかりいると、空気はボウルトップから下方にしか行かない。
従って、煙草の火は下へ下へと延びて行く。
こうなると、煙草の火は燃えやすい所ばかり、ドンドン燃え進んでゆく、この状態を火が潜ると言う。
これに対し、吹き戻しにより、空気をチャンバーの底からボウルトップに上げる事で、延焼のコントロールを行う。
っと、ここから先は「火の管理」に譲る事としよう。
・タンピング
タンピングとは、タンパーで煙草を押さえる事で火のコントロールを行う行為を言う。
パイプ煙草だが、燃える事により葉が膨張したり灰になったりして、スカスカな状態になるが、こうなると延焼がし辛くなる。
喫煙していて煙が薄くなってきたら、軽く吸いながらタンピングして、スカスカになった灰を押さえる。
上手く行けば煙が濃くなるので、煙の状態を確認してから喫煙を再開する。
なお、パイプ喫煙の宿命として、チャンバー壁付近の煙草は燃え難いので、タンピングで燃え残りを崩す事も行うが、これについては「火の管理」の所で詳しく説明する。
・火の管理
パイプ喫煙において、もっとも技術を使うのが「火の管理」だ。
シガレット(紙巻き煙草)であれば、煙草を巻いている紙に発火材が入っているので、何もしなくても最後まで燃えてくれる。
しかし、パイプは吸わないでいると火は簡単に消える。
これは、燃えにくい素材のパイプで煙草を燃やすのだから、物理的に考えても致し方無い事ではある。
では、煙草を全て燃やし尽くすには、最初の火付けで煙草全体に乗せた火を、そのまま維持するのかと言えば、否である。
10円玉サイズもある火を維持しようとすると、盛大に煙を上げる事になり、煙たい上に煙は熱くなるは、煙草は短い時間で燃えてしまうわで、せわしない喫煙になってしまう。
第一こんな喫煙をしていては、味わいも香りもあったものではない。
パイプ喫煙は「煙を喫する」嗜好品であり、煙草を灰にする作業ではない。
また、火を消さない事ばかりに気を取られていると、パイプを焦がしてしまう事もあるので注意が必要だ。
では、どの様に火の管理をすれば良いのか、これはあくまでもルイ・ロペスの例ではあるが、ザックリと紹介しよう。
(ルイ・ロペス流 火の管理)
二回目の火付けで煙草全体に火を乗せた後は、火が消えない程度にチビチビとくゆらす程度にする。
肝心の火種だが、チャンバーの中央で小豆大くらいに保たれ、周りの煙草を炭化させながら、旨味と香りを絞り出して行く。
しばらくすると火が潜って行くので、チャンバー壁付近の炭化している煙草を、火種に向けてタンパーで崩し、煙草を平らにならす。
ここから、タンピングと吹き戻しなどを駆使し、潜った火を煙草の表面まで上げ、煙が落ち着いたところで、再度チビチビとくゆらす。
実際の火の管理は、煙草の状態を見ながら色々な事をするのだが、全体的なイメージとしてはこんなところである。
・ジュースの管理
喫煙とは、煙草葉に含まれる味わい成分を、沸騰させて蒸気にする嗜好品である。
従って、喫煙である以上、必ずジュースと呼ばれる水分が発生する。
なおパイプ喫煙では、煙草から発生した水分と、吹き戻しの呼気に含まれる水分により、パイプ内で結露が発生する。
これがジュースの発生を招く原因だが、パイプの構造上避けては通れない問題だ。
これに対しパイプメーカーは、フィルターやシステムパイプなどを開発し対処しているが、中々解決の付かない問題である。
ちなみに、私は紙のこよりを作り、喫煙途中に入れて取るようにしている。
このジュース、対策を怠ると、喫煙において幾つかの不都合が起きる、その話題でここは終わりとしよう。
不都合その一、マウスピース内で発生したジュースが、チャンバーに逆流すると、煙草がジュースでベチャベチャになる。
特に、テーパーが強めのパイプで起こりやすいのだが、チャンバーの底で煙草の佃煮が出来上がっている事が往々にしてある。
この場合、喫煙の終盤になると、ジリジリと水分が蒸発する音がし、煙草が燃えにくくなると共に、底に泥のような灰がこびりつく。
次に不都合その二、ジュース対策を何もしないでいると、強く吸った時や、パイプをくわえて上を向いた時に、ジュースが口に入る事があるが、あまり気持ちの良いものではない。
そこは快適な喫煙時間が送れるよう、こまめにジュースを除去するのが吉である。
ジュース管理が上手く行けば喫煙を終えた後、乾いた白い灰だけが残り、チャンバーの底もしっかりと乾いている。
この状態であれば、パイプにも良いし吸いきった充実感も違う。
なお、ジュースが発生しにくいパイプもあるにはあるが、煙草の美味しさと引き替えだったり、条件に合うシェイプが限られたりと、中々に頭の痛い問題ではある。
さて、紙面も詰まって来たので、パイプ喫煙 本番編はこの辺にして、次に後始末に話題を移そう。 |
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