16.グルメを極める(嗅覚編)

さて「グルメを極める(嗅覚編)」、ここでの提言は次だ。

 

「グルメの正体は嗅覚だ」

 

まあ、これはいささか誇張が過ぎるが、人間の五感のうち嗅覚は別格の精度を誇る。

 

これはその昔、シングル・モルトのテイスティングサイトで見た記憶であるが、味覚は五味が基本であるのに対し、嗅覚は数百に及ぶ香りを嗅ぎ分ける事が可能であるとの事だった。

 

ちなみに、ウィスキーの香味成分を形作る化合物は、現在200以上報告されている。

 

もっとも、私は犬では無いので、ウィスキーの香味成分全てを嗅ぎ分けられる、そんな並外れた嗅覚を持っている訳では無い。

 

冗談はさておき、本題に移ろう。

 

まともに酒も飲めない(私は下戸です・・・・・・)ルイ・ロペスが、何故あえてお酒の話を取り上げたのかだ。

 

その最大の理由が、パイプ煙草をの味わい方が、シングル・モルトのテイスティングと良く似ている事だ。

 

では早速、シングル・モルトのテイスティングの様子から紹介して行こう。

 

【 シングル・モルトのテイスティング 】

 

「一般的な利き酒師たちは、口に含んだ酒をそのまま飲み込んだりはしない。舌の上でころがすようにして、風味や、口当りを利いた後に吐き出

してしまうのだ。そして口の中に残ったわずかな量のウイスキーを飲み込み、鼻に抜ける香りや喉越し、余韻などをチェックする。」

 

 

ここで紹介されている利き酒師の味わい方、パイプ煙草の味わい方に良く似ている。

 

次はパイプ煙草の味わい方だが、次はあくまでもルイ・ロペス流である事は断っておく。

 

【 パイプ煙草の味わい方 】

 

口にトロリと流し込んだ煙を口の粘膜、上顎の裏や舌の上に馴染ませる様に、口の中に少々とどめる。(口の中でころがすと表現する人もいる)

 

次に、口から上る煙の香りを楽しみながら、やや圧を掛ける様な感じで煙を搾り出し、さらに口の粘膜にタバコの煙を馴染ませる。

 

最後にあらかた吐き出した後の、微かに残った煙の香りと、上顎の裏と、舌の上の唾液に溶け込む様に馴染んだタバコの旨味を味わう。

 

この時、口に馴染んだタバコの旨味は、ちょうど舌鼓を打つ様な感じで味わうが、まさにタバコ本来の甘味、旨味が、ジワッと口に広がり、「美味いっ」と思わず顔がほころぶ瞬間が訪れる。

 

 

以上が、本格的にパイプ煙草を味わう時のやりかただ。

 

確かにシングルモルトは液体だし、タバコは気体である。

 

酒と煙草、直感的には異なった物に感じられるのだが、実はまったく同じものではないかと感じる。

 

シングルモルトが液体を媒介として、香り、味わい、アルコールを運んでくるのに対し、タバコは気体、すなわち煙に乗せて、香りや味わい、刺激にニコチンを運んでくる。

 

ただしこれは、「口で味わう」事に視点を置いた物であり、本来「味わう」と言うものは、より深くより様々な要素を含んでいる。

 

五味はもとより、それ以外では「煙の咽越しと口当たり」、これについては「グルメを極める(触感編)」で取り上げる。

 

次に、漂う煙の香り。

 

実はこれこそが、パイプ喫煙の独壇場であり、最大の魅力となっている。

 

口からでた煙を中心にし、パイプから吹き戻された煙等「周りに漂う煙」から、喉の奥から鼻に抜けて行く煙もある。

 

パイプをくゆらせ、煙が顔や体にまとわり付く事により形作られるグルメな空間、これに浸る一時は何ものにも代え難い癒しではある。

 

ただしここで注目すべきなのは、周りに漂う煙では無く、「喉の奥から鼻に抜ける煙」である。

 

なおこの事を知ったのは、とある喫煙のコラムだ。

 

執筆者は昭和の良き時代、深夜番組の司会をしていた知識人で、大のパイプ・葉巻の愛好家だった藤原義一氏だ。

 

彼は、とある喫煙コラムの中で、こんな一説を書いていた。

 

「まず、味覚です。舌の上、上顎の裏、喉に刺激を与えます。特に口から鼻に抜ける時の刺激がいいように思えます。味は口からというのが常識ですが、たばこは、鼻の孔の薄い膜でも味わう唯一のものだと思っています。」

 

この中で、特にわかり難いのが「上顎の裏」だ。

 

私もシガー(葉巻)を学ぶまではあまり意識していなかったところである。

 

何故ならこの表現は、プレミアムシガーのテイスティングで見かける表現であり、そうでないところではあまり見かけない。

 

しかし、ここがグルメの肝と言ってよいところだ。

 

グルメにとって、最も重要で多彩である香り。

 

チョット見には、「鼻で嗅ぐ香り」と思うところではあるが、ここに捕らわれていると本当のグルメは見えて来ない。

 

この辺りは、「葉巻やパイプの味わい方」を知ると、それなりに実感できる。

 

それが「上顎の裏」。

 

「パイプ煙草の味わい方」で紹介した、「微かに残った煙の香りを、舌鼓を打つように味わう」だが、ここで「上顎に馴染んだ旨みと、上顎から鼻へと抜ける香りのコラボが起きる」。

 

この「味と香りのコラボレーション」を理解する事で、初めて「味わいの、味覚と嗅覚」を、別々に分析できる様になる。

 

私の感覚だと、ここがテイスティングの肝となる。

 

ここまで来ないで、旨いだ不味いだのと言っていては、グルメを語る事など出来はしない。

 

さて、ここで味わいについての答え合わせだ。

 

味わいの柱となるものは、舌や口で感じる五味と、上顎の裏から鼻へと抜ける香りのコラボレーションであると共に、味わいの細かな表情は、五味よりも香りに起因する。

 

「まずい物を我慢して食べる時、鼻をつまむとあまり気にならなくなる」、こんな話を聞いた事がある人もいると思うが、これなどが良い例だと思う。

 

そろそろ紙面が詰まり始めている、嗅覚編はこのぐらいにし、味覚と嗅覚のコラボレーションついて、次は煙を題材にして「グルメを極める(視覚編)」で深堀して行こう。


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