13.グルメを極める(発生編)

グルメの本質を知る為に、どうしても避けては通れないものがある。

 

それが「グルメの科学的検証」である。

 

味わいや香りがどうやって発生し、どの様に伝わり、「グルメをどうやって楽しむ」のか。

 

これらをトータルで理解するのに、喫煙は良いチュートリアルとなる。

 

それでは早速、グルメの発生のメカニズムから。

 

 

2013年~2016年にかけ、次々と広がって行った煙草に「加熱式煙草」がある。

 

もっとも、加熱式煙草の他にも電子煙草と言うのがあるが、これはまったく別の仕組みでグルメを楽しむものである。

 

ルイ・ロペス的に整理すると、加熱式煙草は「グルメ発生型」であり、電子煙草は「グルメ伝搬型」となる。

 

と言う事で電子煙草については次に譲ることとし、ここでは加熱式煙草を例として、グルメ、すなわち味わいや香り、旨味などがどの様に発生するのかを整理して行こう。

 

加熱式煙草、これにはアイコスやグローなどが分類される。

 

仕組みは、最初に電気によりヒーターを暖め、そこで熱い空気を発生させる。

 

その熱い空気を吸引し、「煙草葉を通す事」により葉に含まれる香りや旨みを抽出し、楽しむのがこのタイプだ。

 

これを科学的な手法で解説してみよう。

 

煙草葉は特有の成分「ニコチン」の他に、様々な香りや味わいの成分を含有している。

 

この煙草葉に含まれている香りや旨みの成分だが、沸点はおおよそ100℃~300℃近辺に集中していると言われている。

 

従って喫煙は、これらの成分を気化させて、抽出する事によって行われている。

 

もう一つ分かりやすく説明すると、煙草葉に含まれる味わいの成分は、固体もしくは液体でありこのままでは楽しめない。

 

従って、これらの成分を沸騰させ水蒸気、すなわち煙にする事で、喫煙と言う形で味わう事ができるようになる。

 

このように、喫煙を科学的な視点から分析すると、喫煙と言うものが整理されて行くと共に、グルメに対する科学的理解にまで及ぶ事が出来る。

 

グルメの大きな柱の一つに、「加熱による、味わいの気化」がある。

 

煮る・焼く・炒める、これらの加熱調理によって、香りや味わいの気化が行われている。

 

もっとも、加熱調理にはもう一つの役目、液体化(肉の油など)もあるが、気化の方がより多彩である。

 

この辺りは、グルメを極める(味覚編)・(嗅覚編)で解説するので話を戻そう。

 

ここで話題は煙草に移るが、喫煙者が次々と加熱式煙草に鞍替えして行く中、時折こんな声を耳にするようになった。

 

「長年煙草を吸ってきたが、紙巻き(シガレット)は煙いだけで全然美味しくない。

よくこんな不味いものを吸っていたものだ。」

 

これは、加熱式煙草で「タバコの本来の味」を知った喫煙者の言葉だ。

 

もっとも、この発言をした喫煙者は、シガー・バーで葉巻を体験済みであるが、この辺りに前言の原因があるようにも見える。

 

今までは、「煙草とは火を点けて、煙を吸うもの」と言うのが、一般的な概念だった。

 

しかしこの喫煙の捉え方は、紙巻き煙草によりもたらされた弊害だと考える。

 

紙巻き煙草シガレットだけを見ていると、あたかも煙を吸っているだけに見えるのは確かだ。

 

しかし本来の喫煙の要諦とは、「火の熱により、如何に煙草葉に含まれる旨味や香りを、壊すことなく引き出すか」にある。

 

ただし、これにはある条件がある。

 

確かに香りや旨味の成分を気化させるには、それなりの高い温度が必要ではあるが、高すぎる温度は逆効果となる。

 

火の用心のポスターでもたまに見かける事があるが、煙草の火の温度は実に最高800℃に達すると言う。

 

ところが香りなどの成分は、「500~600℃以上」の熱で、破壊されるとも言われている。

 

従って、紙巻き煙草をガンガン吸っていては、味も香りもあったものではない。

 

このように、グルメの科学的検証から、喫煙におけるシガレット(紙巻きタバコ)の弊害が明らかとなる。

 

シガレット(紙巻き煙草)のコンセプトである、「忙しい時代において、手軽にかつ、手っ取り早くニコチンを接種する」が、喫煙が本来持つ魅力や文化までをも、見失わせていたのである。

 

これに対し、パイプ喫煙の上級者は次のように、高い喫煙技術を持つと共に、深い文化へも到達している。

 

パイプ喫煙のベテランともなると、小さな種火を上手にコントロールし、出来るだけ低い温度で長時間、パイプ煙草の香りや味わいを上手に引き出す事ができる。

 

考えても見るがいい。

 

パイプスモーキング・コンテストの記録は2時間に及ぶ。

 

煙草をガンガン燃やしていては、わずが3gの煙草で、2時間も喫煙できる道理はない。

 

このように、彼らはほんの少量のタバコを使い、マッタリとグルメな時間を過ごしているのである。

 

ここに、バーチャル・グルメの楽しみの、時間と味わいの両立が生まれている。

 

パイプ喫煙文化を楽しみたい人は、より長く、より美味しい時間を過ごせるよう、ぜひ喫煙技術を磨いてほしいものである。


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