パイプ物語9-2クリスマスなタバコ達

9-2　クリスマスなタバコ達

2001年12月21日号

２１世紀最初の年も残す所わずかとなり、今年の４月に創刊した「パイプ物語」も、満９ヶ月を迎える事ができました。
これも一重に、愛読者の皆様のご支援と、ホームページへの掲載のお許しと、作画・管理の労を担って戴いている作者様のご努力の賜物と感謝申し上げます。
そして今号はそんな皆様のご愛顧にお答えすべく、又、年末年始の一時をゆったりとパイプと共に過ごして戴ける様にと、盛り沢山の内容にしたいと思います。
クリスマス限定タバコ２品、２１世紀記念タバコ１品、そして私「ルイ・ロペス」がクリスマスにお勧めするタバコ１品の、４本立てで御紹介させていただきます。
それではパイプと共に過ごす聖夜を、ゆっくりとご堪能ください。

フォンアイケン（独）ストレ－ト・バニラ
クリスマス限定品
販売価格　￥２，５００　内容量１００ｇ

六角形で黄色を基調とし、クリスマスを感じさせるデザインの外箱、まさに限定品にふさわしいタバコである。
そしてタバコ葉の香りは品の良いバニラの甘い香り、しかもナティーなコクも感じる。
それは、高級な着香タバコ「カレドニアの赤」を思い起こさせ、そのナティーで艶のある甘い香りを、幾分サッパリとさせた趣がある。
タバコの葉はダークがかったブラックキャベンディッシュ一色と言った感じで、刻みはやや大きめ、水分含有量はそれほど高くは無さそうである。
とりえずミディアムサイズのパイプに詰めて一服してみる。
香りは素直な甘いバニラ香に、ややスパイス感のあるシナモン様の香り、そして酸味が味を引き締める、なかなか上品な香りのタバコである。
しかもただ甘いだけの香りではない。
シナモン様の香りがブラックキャベンディッシュ等でありがちな、黒砂糖様のくどい感じを良く抑え、サッパリと吸いやすい香りに仕上げている。
さらにラム酒の酸味が味わいに奥行きとコクを与えている様で、一言で表現して、クリスマスケーキと言って差し支え無い味わいである。
さらに強い香料を使ったタバコにありがちな、邪魔になる様なトゲトゲしさは感じられず、非常に吸い易いのであるが、しかし、決して単調ではなく、上品さと深さがある良いタバコである。
値段もこのクラスではリーズナブルなので、バニラタバコフリークならお買い得の逸品と言えよう。

プランタ（独）アノ・エムエム・ツ－
２１世紀記念たばこ
販売価格　￥３，５００　内容量１００ｇ

着香タバコの中では、最高級の部類に入る価格帯であるこのＭＭ２、冒頭から思い切って一言で表現してみましょう。
それはまさに「ワイン」。
缶の裏にも説明されている通り「バ－ガンディワイン」の香りを十分に堪能できるタバコだと思います。
これまでパウチ物を中心にワインを使ったタバコは幾つも試して来たが、これ程ハッキリとワインの味わいを楽しめるタバコは無かった様に思う。
今回はチャンバー径こそミディアムサイズではあるが、しっかりとチャンバーの深さがある、大振りの部類に入るパイプで吸ってみた。
そして点火直後、香りの立上がりに、やや香料の人工的な物を感じたのであるが、所が吸い込んで行くと、これが実に良い味わいになって行くのである。
もっとも、ワインの専門家でも無く、かなり下戸である私が批評するのもおかしな話ではあるが、しっかりとアルコール感まで感じさせてくれる、シットリとしたワインの香りは、癖になるものがある。
そして喫煙の終盤に入っても、嫌みな味わいは出て来ない。
それどころか、葉タバコの旨味が出てきて、コクのある味わいが楽しめた。
説明書きには、バージニアとブラックキャベンディッシュの記載があるが、たぶん良質で、比較的癖のない素直な味わいの葉タバコが使われているのではないだろうか。
しっかりとタバコの味わいを形作りながらも、決してワインの香りを邪魔しないブレンド、それがハッキリとしたワインのキャラクターを、感じさせてくれるＭＭ２の正体ではないかと思う。
価格的には高めではあるが、ワインフリーク、又は洋酒フリークであるならば、年末用に奮発してみたくなるタバコである。

マクレーランド　ＣＨＲＩＳＴＭＡＳ　ＣＨＥＥＲ
２００１年クリスマス限定品
価格　￥４，５００　内容量１００ｇ
　

日本で購入できるパイプタバコの中で、最も高額なものになるであろう「ＣＨＲＩＳＴＭＡＳ　ＣＨＥＥＲ」、できればパイプ熟練者に吸っていただきたいタバコである。
と言うのも、このＣＨＲＩＳＴＭＡＳ　ＣＨＥＥＲ、上級者向けと言われるイギリスタイプであり、無着香、非ラタキアタバコだからで、かなりの高額商品である事も手伝い、タバコ本来の味わいを求める人に対してでなければ、勧めにくいタバコである。
肝心のタバコはと言うと、「毎年パッケ－ジは変わりませんが、ブレンドの構成を変えています。」の、うたい文句にもある様に、今回は１９９５年のノースカロライナ産のビンテージタバコを使っていると言う事である。
しかもミドル・ベルトと書かれているので、中葉のみ使用と言った所だろう。
タバコの形状はフレイクを手揉みで解したブロ－クンフレ－クで、ビュッテラ・ロイヤルビンテージのブレンデッドフレイクによく似た、熟成感タップリの香りがする。
今回のパイプはお約束どおり、かなり大ぶりで、チャンバー径２２ｍｍ、深さもしっかりした物を選択した、タップリとタバコを詰めて、マッタリと長時間喫煙できそうである。
そして、タバコを詰める時には、熟成フレイク物に良くある、目に染みる様な酸味が立ち上って来て、嫌がおうにも期待は高まる。
さすがは定評のあるマクレーランドの熟成物と言った所で、熟成されたタバコのみの味わいを求めるプレミアムシガーに、通じる所があると言えそうだ。
ただ、着香物でも無ければ、ラタキア物でも無いので、美味いタバコだとは言えるのだが、非常に表現しにくい味わいである。
しかし、あえてここは心を鬼にしてテイスティングしてみたい。
まず、このＣＨＲＩＳＴＭＡＳ　ＣＨＥＥＲに良くにたタバコであるが、今まで吸った事のある中では、ビュッテラのブレンデッドフレイク、ラットレイのオールド・ゴーリー、マリンフレイクと言った所である。
しかし、そこはアメリカの会社マクレーランドである、やはりブレンデットフレイクに一番近い味わいと言えそうだ。
そしてそのブレンデッドフレイクであるが、熟成されたタバコ感は言うまでも無いが、結構酸味の強い味わいで、ミネストローネ（トマトのスープ）を彷彿とさせる旨味を持つタバコである。
それに比べＣＨＲＩＳＴＭＡＳ　ＣＨＥＥＲは、酸味はそれ程強くはない。
しかしバージニアの甘味に関しては、しっかりしている味わいで、タバコの旨味も充分であると感じた。
しかも、ややアーシーとも言える、落ち着いて深みのあるタバコの香りがあり、より味わい深いブレンドに仕上がっている様だ。
ただしこのタバコ、フルボディーと言っても差し支え無い程強いタバコなのだろう、大ぶりのパイプでの喫煙の終盤、ニコチン酔いなのだろうが、結構きついと感じた。
さらに、大きなパイプでマッタリ吹かしても嫌味な感じは出て来ないし、しっかりとしたタバコの旨味が持続するので、贅沢なタバコ葉をタップリと使っていることをうかがい知る事が出来る。
まさに「おめでとう！クリスマス」、と言いたくなる逸品である。

今まで縁起物と言う事で、限定品ばかり紹介して来たが、これでは私を筆頭にした安月給スモーカー、又はパイプ経験の浅い人にとっては拷問に近いものがある。
と言う事でこれから、比較的手に入りやすく、価格も手頃で、クリスマスに打って付けのパイプタバコを、ご紹介致しましょう。

ボルクムリーフシャンパン
スウェーデン
単価７６０円５０ｇ
タイプヨーロッパ
咽越し軽い

やや安直過ぎると思うが、クリスマスと言えば、やはりシャンパンしか無いでしょう。
そこで、これからご紹介するのが、ボルクムリーフのシャンパンである。
フランスのシャンパンを使用し、すっきりとした甘さで、姉妹品であるバニラ・モルトより歴史の古いタバコである。
そしてその外観であるが、金地の高級感あふれるパウチを使用しているので、クリスマスに吸っても決して見劣りする事は無い。
また、ボルクムリーフのトレードマークである帆船がウグイス色で描かれていて、シャンパンの風味に良くマッチしている。
タバコは甘酸っぱいシャンパンの香。
サッパリと品のある、白ワインと炭酸の感じが良く出ている。
ボルクムリーフの強力なラインアップの中にあって、地味な存在だと思われがちなシャンパンなのだが、中々どうして個性的な存在である。
爽やかな甘味と酸味の中に、鮮やかに炭酸のほろにがい感じが出ている。
私の記憶の範囲内では、シャンパン風味のタバコはボルクムリーフだけである。
他では味わえない、炭酸感のあるサッパリした味わい、まさにクリスマスにぴったりのタバコである。
そして吸い込んで行くと、炭酸感は弱くなり、葉タバコの旨味が出て来る。
キャラクターはミディアムライトで軽い喫味、初心者でも抵抗なく吸える。
しかしシャンパンの淡い味わいに加え、やや複雑な喫味なので、このタバコの良さがわかるには、多少の経験が必要かもしれない。
しかし、希少とも言えるシャンパン風味のタバコ、これを吸わずして、クリスマスは語れないだろう。

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