33-1 喫煙スタイルについての一考察

2005年9月17日号


長きに渡って掲載してきたパイプ物語もこの掲載を持って大詰めとなります。
「タバコの味わいの構成要素」・「パイプがタバコの味わいに及ぼす要因」・「テイスティング時に考慮すべきタバコ葉に対する知識」と、持てるものは、大方書きつくした感がある。
そんな訳で、最後にこの「喫煙スタイルについての一考察」を、持って来る事になった。
その理由は、喫煙スタイルの主体が、スモーカー個人に属する事柄であり、良く言えばスモーカーのオリジナリティーであるが、悪く言えば独善的な色彩が一番強く出る所であると考えるからである。
そんな訳で、喫煙スタイルの一考察については、私の好みから話を進めて行きたい。

まず私の喫煙スタンスだが、以前にも書いた通り、「悪食の安月給スモーカー」である事に変わりは無い。
まあ、そうでもなければテイスティング等、出来ない相談である。
着香好きのスモーカーも居れば、拒絶反応を示す人も居る、ラタキアタバコもしかりである。
また、それぞれのタバコにコンセプトが有り、特長が有る訳で、全てのスモーカーを視野に入れてテイスティンクすると、勢い批判的な事は書き難くなる。
だからと言って、自分自身の好みが無い訳でも無い。

これは、正直な話となるのだが、長年パイプ喫煙をして来た結果、強めの着香タバコが「ややクドイ」と感じる様になって来た。
かと思えば、たまに「煙を肺に入れたくなる」スモーカーである。
この二つの事柄が相まって、私自身はヴァージニアブレンドか、それに準ずるタバコが好みである。
従って、自分の時間がタップリ取れる時のタバコに、ヴァージニアブレンドを選択する事が多い。
しかも、やや大振りなパイプを選び、チビチビと喫煙する。
これは、タバコの旨味と香の妙を同時に楽しむ方法だが、喫煙所要時間(再点火ありだが・・)2時間と言ったところである。

しかしこれは、時間がタップリ取れる時に限られるので、喫煙に裂ける時間がやや短い時は、小振りなパイプをチョイスするか、ミディアムサイズのパイプに、イングリッシュブレンド(ラタキア)ものを組み合わせる。
これは、フレイク(レディーラブドを含む)中心のヴァージニアブレンドに比べ、イングリッシュブレンドの燃焼速度が早いからと言う理由が一つと、夜向けには「ラタキアの落ち付いた香り」が適していると感じるからだ。

さらに書けば、このイングリッシュブレンドに対しては、やや大振りで寸胴なチャンバーのパイプが好みである。
あくまでもこれは私見になるのだが、ラタキア系のタバコの特長は、「落ち着いた香と、ユッタリとした煙」であるので、少し緩めに詰めたタバコを大きめにユッタリと煙にする。
まあ、イングリッシュブレンドをチビチビと喫煙する事はあまりしないと、言い替えても良いか。
過去様々なタバコを吸ってきた訳だが、イングリッシュブレンドに対しての考えは、極端な表現をすれば「香料無しの着香タバコ」と言う事であり、少々雑な吸い方をしても、それなりに楽しめるブレンドではないかと思う。(ヴァージニアブレンドに比べて分かり易く、楽しみ易いタバコと言う意味である)
逆の視点から言及してみれば、ラタキアタバコを楽しむのにチビチビ吸っては、かえってイングリッシュブレンドのコンセプトが生きて来ない、そんな気がするのである。
話が少し脱線したので本題にもどすが、更にまとまった時間の取れない昼間、これをどうしているかと言うと、私の場合「着香タバコに安パイプ」の組合せが多い。
ハッキリ言って昼間のパイプ喫煙は、紙巻の代用となっているので肺喫煙が主流である。
もう一つ言えば、昼間の喫煙ではジックリタバコを楽しむ余裕は無いし、雑然としたシチュエーションでの喫煙では、タバコの味わいも分かり難い、そんな風に感じるのである。
だから、タバコそのものが旨いブレンドや、複雑な味わいを楽しむタバコは「昼間吸うには勿体無い」そう思っている。

従って、それなりに安価なタバコで、短時間で満足感が得られる物が必要になってくる。
それには、「手ごろなサイズのパイプ」に、「分かり安い味わいのタバコ」、「それなりの煙の刺激」がほしいところである。
そんな事情がある「昼間の喫煙」には、バーレー比率の高い着香タバコが適役である。
短時間(5分以下)で手っ取り早く喫煙を済ませるには、中々重宝している。
さらに私個人の事情になるが、テイスティング目的で、定期的に発生する「余剰着香タバコ」には事欠かないので、まさに一石二鳥と言う事になる。

以上、喫煙時間に合わせた私なりのスタイルを列記した訳だが、更に様々なTPOがあると思う。
個々人、それぞれのTPOに合わせた喫煙スタイル。
ぶっちゃけた言い方をすると、個人のパイプの楽しみ方、喫煙時のシチューエションであるが、あくまでも「人それぞれであり」、「個人の好みであり」、自由である事は否めない。
しかし、その楽しみ方の奥深さは、タバコに対する知識、パイプに対する知識、喫煙の経験、これらに比例すると思う。
知識が深まったら深まっただけ、技術が上がったら上がっただけ、より深い楽しみができるのではないか。
だからこそ、パイプ喫煙は息の長い趣味と成り得るし、文化とも成り得るのではないかと考える。
足掛け4年続けて来た「パイプ物語」であるが、パイプ喫煙の基本となる所は、あらかた押えて来たつもりである。
この「パイプ物語」を土台とし、それぞれの喫煙スタイル、喫煙の楽しみ方、それぞれのこだわり、こう言ったものを楽しみながら見つけて行って頂ければ幸甚である。

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