30-1 パイプタバコの味わいに対する一考察

2004年12月12日号


パイプ物語の第一話を書いてからすでに3年以上が経過した。
そして最終とも言えるこの第六部では、パイプ物語を書きながら学んできたもの全てを紹介できればと考えている。
ただし、自分の好みのタバコやパイプ、マウスピースの相性や作家の好みなどに言及しても、それは個々人の感性に属する事なので、あまり重要ではないと考える。
したがって、このパイプスモーキングの一考察は、これからパイプスモーキングを研究して行きたいと考えている人の一助になるよう、全てのパイプスモーキングの基本となる部分を掘り下げて書いて行こうと思う。
勿論、話の内容は結構深いところにまで及ぶ事になるが、それに比例して私個人としての考えが主流になって来る。
故に、第六部の題名を一考察とし、あくまでも「一パイプ愛好家の主観」として参考にしていただければ幸甚である。

さて、記念すべき「パイプスモーキングの一考察」、この最初に持ってきたものは何か。
それはタバコの味わいに対する一考察である。
シガレットにしろ、葉巻にしろ、パイプにしろ、味わう基本はタバコにある。
まず、この喫煙の基本中の基本である「タバコの味わい」これを押さえておかなければならないと思う。
何故なら、様々な喫煙の中にあって、最も高い喫煙技術をスモーカーに要求するパイプ喫煙。
又、最も自由度が高い喫煙であるパイプ喫煙であるが故に、それだけに選択の幅がありすぎて、何を基準にパイプ喫煙を考えていかなければならないかを、ジックリと見据える必用があるからである。

従って、タバコの味わいの構成要素を再度確認し、整理するところから始め、次にパイプの形状や、喫煙の仕方でタバコの味わいがどの様に変化するのか。
そして、このパイプ喫煙の基本を押さえた後、タバコ葉の特徴と、ブレンドの特徴、最後に喫煙のスタイル、こんな順序で書いて行きたいと考えている。
ここまで理解すれば、タバコを如何に上手に味わうか、パイプ喫煙をどう考察して行けばよいのか、それに対する知識のベースが出来あがると、期待して頂いて良いと思っている。


さて、前置きが長くなったが、まあ計画通りと言う事で、本題のタバコの味わいの構成要素の話に入って行くとする。

それではまず最初に、タバコの味わいの構成要素を大きく三つに分けてみよう。
最初は一番肝心な「タバコその物の味わい」これをはずす訳にはいかない。
それから、パイプタバコには必ずと言って良い程ついて回る、「香料の味わい」。
最後は、あまり話題に上りにくいかもしれないが「物理的な味わい」である。
ここで、読者にひとつの疑問を提示しよう。
タバコ葉その物の中に、「味・香・煙(物理的なもの)」が含まれているのに、何故上記の様な分類をしたのか。
それは、これがパイプ喫煙に大きく関係する事だからである。
パイプ喫煙は、タバコは同じでも、選択するパイプによってその味わいを変える、その原因に「味わい保存の特性」が大きく関与していると考えるからである。
チャンバー径やその形状、喫煙の仕方や燃焼温度、煙道の長さやベント角度による煙の流れの変化、これらの要因でタバコの味わいは微妙に変化する。
この辺りは次章の「パイプによる味わいの変化の一考察」でくわしく書くとして、これに到る為には「味わい保存の特性」の、強い弱いが肝心であると考えている。

それでは、次に味わいの三大要素の詳細に入って行くと共に、「味わい保存の特性の強弱」についても触れて行こう。
取り合えず味わい保存の特性の強いものから順次列挙するが、これらの見解は私の独断である事を始めにお断りしておく。
まず最初持ってきたのが、タバコの味わいの要素の中で、最も強い保存特性を持つと考えている「トップフレーバリング。」
これは、ブレンド工程の最後に使用されるものだが、至って科学的で物質として安定していると思われるし、タバコの味わいの構成要素の中では一番「揮発性」が高い。
それが故に、燃焼温度などの要因に邪魔されず、「パイプの構造」と言う物理的な要因にもあまり左右されずに、喫煙当初から強めに出てくる、最も強く安定した味わいの要素だと思う。
ただし揮発性が高い分、持続性は弱いが、パイプタバコの第一印象に対し、最もインパクトのある要素である。

その次はタバコ葉の加工時に添加される香料、その次がケーシングソース(たぶんタバコ葉加工時の香料と、ケーシングソースの境目はあいまいだと思う)
そして香のトリを務めるのが、タバコその物の香。

ここまで上げて来たのはパイプタバコにまつわる香の要素であるが、では肝心のタバコの旨みやタバコ感は何処に位置するのであろうか。
私はタバコの味、旨み(タバコ感を含む)に関しては、原則としてタバコ葉その物が持つ要素と考えているので、香の要素が持つ「わかり易さ」や「多様性」を加味して判断した場合、タバコその物の味わいは、最も弱い部類に入ると考える。
更に、この味わいは、自然界の中で作られた物質であり、科学的な安定性に欠けると考えている。
従って、パイプの構造的条件や、パイプ喫煙時の燃焼温度が、より強く作用すると考えている。
もう一つ付け加えると、タバコ喫煙時の燃焼温度が上がれば上がるほど、壊れ易い味わいだとも考えている。
この辺りが「パイプ物語 第二部」の「味わいを楽しむ」を、タバコの楽しみ方の最後に持ってきた理由である。

そしてタバコの味わいよりさらに弱いのは「燃焼時に発生する水分」
これはタバコの味わいを阻害する要因と考えているが、ブライヤーパイプでの喫煙において、チャンバーや煙道内で吸収され、マウスピース内で結露する事を考えた場合、最も弱い要因だと考えている。
そして、この「燃焼時に発生する水分の、保存性の弱さ」を別の角度から見ると、より良いパイプ喫煙の重要な要素の一つが、燃焼時に発生する水分の吸収性であるのではないか、と言う事が見えてくる。
この件に関してこれ以上言及すると、次章の「パイプの特性に対する一考察」に響くので、第三の要素「物理的な味わい」でこの章を締めたいと思います。


「タバコの物理的な味わい」
これは聞きなれない言葉だと思うが結構重要な要素である。
以前にも紹介した藤本義一氏の「煙」「香り」「味」の中の「煙」がそれに該当するが、この煙による視覚効果は案外馬鹿に出来ない。
一度、暗闇の中でパイプ喫煙してみてほしい、そうすれば煙が見えない事がどれほど喫煙に対してマイナスか分かると思う。
私も試した事があるが、煙が見えないと「どれだけ吸えているのか」、本当に分かりにくいものである、喫煙が実に頼りないものに感じた。
しかし、更に重要なのが煙の荒さ(煙の粒子)や刺激で、まあ煙の口当たりと表現しても良い。
しかしパイプタバコで、「煙を肺に吸い込んだ時の、刺激やのど越し」を重視する肺喫煙者にとっては、この煙の荒さと刺激は、かなり重要なファクターとなって来る。
煙を肺に吸い込んだ時の刺激やのど越しは、タバコの強さと煙の粗さが影響するからで、この物理的な要素は味わいや香りとは、別の角度から捕らえられるべきだと考える。
また、この煙の粗さは、最近のドイツやアメリカのイングリッシュミクスチャーで、タバコの味わい・口当たりをドライ(タバコを軽くすると同時に、ヴァージニアのベタツキ感を押さえる)にする目的で使われている様な感想を持っている。
さて最後に、この物理的な味わいの「保存性の強弱」であるが、煙の荒さがニュートラル(真中辺ぐらい)。
「刺激」とタバコとしての強さ、私はこれを「タバコ感」と同等と考えているが、これはどっちかと言うと弱い部類にはいるであろう。
少々文が長くなってきたので、次章の「パイプによる味わいの変化の一考察」は、何故「味わい保存の特性」を考えるに及んだのか、その説明から入って行きたいと思います。


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