12-1 味わいを楽しむ(さらなる高みを求めて)

2002年3月1日号


今回は「パイプの味わい方」の最終と言う事で、「さらなる高みを求めて」と言う副題をつけさせていただいた。
どうして、こんな柄にもない高尚な副題をつけたのであろうか。
それにはチョイト訳がある。

その訳の一つが、この「味わいを楽しむ」が、4章に渡って紹介してきた「パイプの味わい方」の最終章であり、私のつたないパイプ経験の総てであるからである。
もっとも、総てとは言っても、「パイプタバコの味わい方について」、だけではあるのだが、様々な楽しみ方を持っているパイプ喫煙の中においても、その主体となるべきものは、「タバコを美味しく味わう」だと思っている。
そして何はともあれ、真にパイプを美味しく味わう事が出来るようになったのであれば、それはもうパイプ喫煙の上級者と呼んでも、差し支え無いと考えているからである。
更にもう一つ、我流で歩んで来た、私の喫煙スタイルにも、あえてこの章に副題をつけた理由が隠されている。
実を言うと、こんな所で偉そうに「パイプ物語」等を書いている私であるが、「タバコの味わい」と言う概念が確立されたのは、パイプ喫煙を初めてから、かなりの経験を積んでからであった。
その原因を作った私の喫煙スタイルであるが、前章で紹介した様に、肺喫煙をする上に、甘い着香のタバコを好んで吸っていたものであった。
その結果、パイプタバコの多彩な香りばかりに目が行ってしまい、タバコ本来の味わいと言った所を意識していなかったのである。

そして、このタバコの味わいの表現に関しては、私の所有しているパイプの本に、このように説明されている。
ボディー(タバコのコク)、アロマ(香り)、フレーバー(タバコ本来の味)の3つであるが、私はこの中のアロマ(香り)だけに目が奪われていて、フレーバー(タバコ本来の味)や、ボディー(コク)にあまり意識を向けていなかったと言う訳だ。
そこで登場したのが葉巻である。
パイプとは違い、タバコの味わいのみで勝負する葉巻の世界。
又、1本単価が紙巻きタバコの数十倍、数百倍もする至高とも言える葉巻の世界。
であるが故に、タバコの味わいに対するこだわりは、パイプタバコや紙巻きタバコを大きくリードしている世界、そこに足を踏み入れた。
そこでようやく気付いたのが、タバコの味わいであるが、これはまさにタバコを口で味わうと言った、喫煙であった。
良い香りであるとか、煙を吸い込んだ時の刺激であるとか、口から鼻に抜ける香りであるとかでは無く、口膣でタバコの旨味、コクを楽しむと言う物である。
この辺りは特に、キューバ産のプレミアムシガーが得意としているのではないかと思われるが、まだまだ葉巻の世界では門外漢であるので、これ以上の言及は避けたいと思う。

話を元に戻すが、この葉巻の味わいでよく言われるのが、前章でも書いた、藤本義一さんが紹介している、「舌の上、上顎の裏、喉に刺激を与えます」である。
しかしこの表現、特に「上顎の裏」はプレミアムシガーを数多く嗜んできた人にはなるほどと思えても、そうでない人にとっては分かりにくい表現だと思う。
そこで、そこでである、私はタバコの味わい方にとって非常に参考になる記述を、とあるサイトで見つけたのでここで紹介したいと思う。

それは、はからずも葉巻との相性(ワインと食べ物の組み合わせになぞらえて、マリアージュと表現する人もある)が良い、シングル・モルトのテイスティングのサイトであった。では、その一文を紹介させていただく。
「一般的な利き酒師たちは、口に含んだ酒をそのまま飲み込んだりはしない。舌の上でころがすようにして、風味や、口当りを利いた後に吐き出してしまうのだ。そして口の中に残ったわずかな量のウイスキーを飲み込み、鼻に抜ける香りや喉越し、余韻などをチェックする。」
ここで紹介されている利き酒師の味わい方が、私がしているパイプタバコの味わい方に良く似ているのである。
シングルモルトの方は液体であり、パイプタバコは気体であるが、味わい方の見た目はそっくりと言って良い。
まず、 口腔内喫煙で口に含んだ煙を口の粘膜、上顎の裏や舌の上に馴染ませる様に、3〜5秒程度口の中にとどめる。(口の中でころがすと表現される方もいる)
そして、やや圧を掛ける様な感じで煙を口から搾り出し、さらに口の粘膜にタバコの煙を馴染ませる。
最後にあらかた吐き出した後の、微かに残った煙の香りと、上顎の裏と、舌の上の唾液に溶け込む様に馴染んだタバコの旨味を味わうのである。
この時、口に馴染んだタバコの旨味は、ちょうど舌鼓を打つ様な感じで味わうのであるが、まさにタバコ本来の甘味、旨味が、ジワッと口に広がる。
「美味いっ」と思わず顔がほころぶ瞬間である。
確かにシングルモルトは液体だし、タバコは気体である。
しかし、シングルモルトが液体を媒介として、香り、味わい、アルコールを運んでくるのに対し、タバコは気体、煙に載せて、香りや味わい、刺激を運んでくるのである。
その味わい方において、直感的にはやや異なった物に感じられる液体と気体ではあるが、実はまったく同じなのではないかと感じる所である。
ただし、上記で紹介して来たのは、「口で味わう」と言う事に視点を固定した物であり、本来「味わう」と言う言葉はより深く、より様々な要素を含んでいる。


「香りを楽しむ」で紹介した、煙の香り、口から鼻に抜ける香り、パイプから吹き戻される煙に加え、口での味わい、煙の咽越しと口当たり、喫味の強弱等々、タバコの味わいをトータルに表現した物が「味わい」である事は、あらかじめ了承いただきたいものである。
そしてこの、「タバコの味わい」を真に楽しめる様になると、パイプ喫煙の世界もより広がりを見せるのである。
確かに、私が初級者向けに位置付けしている、わかり易い着香物のタバコは、勢い香料の部分に目を奪われがちになるが、パイプ喫煙に慣れて来ると、その底辺にしっかりと主張するタバコ本来の味わいを感じられる様になる。
そうなれば、香料だけの楽しみ方とは一味違った、マッタリとした味わい、葉タバコと香料の微妙なブレンド、こう言った世界まで楽しめる様になるのである。
そればかりか、使われているタバコのグレードが分かる様になり、ブレンドされているタバコの葉組までもが、おぼろげながらも想像出来る様になると、言っている人もいる位である。
さらに、ここまでパイプタバコの味わいが分かる様になれば、私が上級者向けの筆頭にあげている、ラタキアがブレンドされているイギリスタイプのタバコの真価も理解できる。
このラタキアタバコに対しては「LS安藤さんのBBS」で、鰹のタタキと比較して分かり易い説明を書いてくれた人がいるので紹介してみよう。

「ヴァージニア・ラタキア・ペリックがブレンドされた、代表的なイングリッシュミクスチャーであるが、ヴァージニアの旨味が鰹だとすると、ペリックはポン酢、ラタキアはニンニクの様な関係で、鰹だけでも充分美味しいのであるが、そこにニンニクの風味とポン酢が加わる事により、鰹をより一層美味しく味わえるのである。」と言った様な内容だったと記憶しているが、まさに言い得て妙である。
言葉に現しづらい程の、独特の香りを持ったラタキアであるが、しかし、ヴァージニアの甘味や旨味を味わえる様になると、このラタキアの香りが微妙なアクセントとなり、実にコクがあり旨いタバコの味わいを、演出してくれるのである。
俗な言い回しをして見ると、「良質なヴァージニアの旨味と、口から鼻に抜けるラタキアのコクの組み合わせは、最強である」と言った所であろう。
そして、これを読んでいただければ、イギリスタイプのパイプタバコが、何故上級者向けと言われているのかが分かると思うし、タバコ本来の味わいが分かってこそのタバコであると言う事も、理解できると思う。

以上、4章に渡って長々と紹介してきた「パイプの味わい方」であるが、実はこの後、パイプスモーキングの最大の欠点であり、パイプスモーカーが乗り越えなければならない、最大の壁が控えているのである。
それが「喫煙技術」これに関しては、次回のテイスティングで終了となる「パイプ物語 第二部 パイプを楽しみたい人へ」の後を受け継ぐ第三部で、追々触れて行きたいと思います。
まあ、大した事も書けないとは思いますが、乞うご期待と言った所でしょうか。

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