28-1 スモークイン東京 Part3

2004年2月4日号


第一部が大幅に遅れたおかげで、3時半開始の予定であった第二部が始まったのは、4時を少し回った所であった。
会場奥のスクリーンに映像を投影しての第一部に対して、第二部の「パイプたばこ−ブレンドの実際」は入り口付近の長机を一杯に使い、タバコの展示をしてのレクチャーとなった、サンプルで展示されたタバコは長机4台分程度にはなろうか。

束ねただけの原料葉が数種類、2リットルはあろうかと言う大きな瓶と、その半分くらいの小さな瓶がそれぞれ数種類、そこにブレンドする前の加工処理が施された刻みが入れてある。
さらに厚さが5〜6cmで、40〜50cm四方程度の板状にプレスされたタバコが数種類等、状態別、形態別と言った陣容で並べられていた。

ここで少し意外に思ったのは、オリエントが産地別に板状の形で3〜4枚展示されていた所で、何でも麻袋に入れられ、長方形に固められた形で輸入されるので、この様な形になるとの話である。
「皆さん、タバコが良く見える所にお集まりください」と会場にアナウンスが流れると、聴講者は一斉に席を立ち、タバコの周りに移動した。
ところで肝心のレクチャーであるが、講義と言う形をとらず、ヴァージニアから始まり、暗色火干葉まで一通り原料葉の説明、更にイギリス・ヨーロッパ・アメリカと、パイプタバコのタイプの説明と、資料に乗っ取って進められていった。

ここで、最近のヨーローッパタイプの動向、タバコ葉の加工方法等が紹介されたのだが、加工葉については別の所で取り上げる事にして、少々コアな原料葉「暗色火干葉」についてだけ触れておこう。
この「暗色火干葉(ファイアーキュアード)」であるが、確か飛鳥には使用されていたと記憶しているが、海外のタバコレビューでブレンド内容を確認しても、中々お目に掛かる事はない。
加工はラタキアに近く、燻煙による乾燥で暗褐色に仕上げられるが、その原料はオリエントではなくバーレー系だと言う事である。
又、最近のヨーロッパのパイプタバコ事情であるが、バーレーやトップフレーバリングの強いダニッシュ(ダニッシュ・スカンジナビアン)が主流で、比較的着香の弱い、ダッチ(コンチネンタル・ダッチ)は縮小傾向にあるとの事である。

次に、肝心なブレンドの話であるが、シガレットが40程度のタバコをブレンドするのに対し、パイプタバコのブレンドはもっと少なく、香料の依存度は高い。(ただしシガレットのブレンド数の多さは、タバコの味わいを均一に保つのが目的。)
又、ブレンドの作業の中で一番気を使うのが温度管理で、発酵時にタバコの温度が50度を超えると、タバコが焼けてしまうそうである。
そして、パイプタバコに使われる香料であるが、沸点の低い揮発性の高い物がトップフレーバリングに使われ、沸点の高い揮発性の低い物がケーシングに使われるのが基本だと言う事である。
※ ケーシングで使われるグリセリンは、タバコ葉を加工しやすくする為の調湿(保湿に近い)が主たる目的である。
従って、トップフレーバリングは開封時にフワッと立ち上り、着火後も鋭く立ち上がるが持続性に乏しく、ケーシングは穏やかな香り立ちながら、持続性が高い。
パイプタバコの着香は、トップフレーバリングとケーシングの特徴を踏まえ、香り立ちと持続性を計算しながら、されているとの事である。

ここでバーレーの着香についての説明が入るが、バーレーに行なわれる着香は、フレーバー付けもさることながら、辛さを抑える目的も大きいそうである。
しかしこのバーレー、加工しなければ辛い上に臭いタバコで、とても吸えるものでは無いのだが、沢山取れるので何とかしなければいけないと言う理由で、空気乾燥・ココア等での着香等の処理を施して吸える様にした訳である。
しかしこれが、意外にもオリエントとの相性が非常に良かった為に、「アメリカンブレンドのシガレット」としてブレイクしたのだそうだ。

ところで、シガレットと言えば、今回試喫用として両切りタバコ状に加工された、単葉が用意されていた。
銀色の缶に(多分ラベルの貼られていない缶ピース)ヴァージニア、バーレー、トルコ(イズミール)、ギリシャの札が付けられていて、聴講者に配られた。
会場では思い々々に火を付けては味見をしていたが、「さすがにバーレーは吸えない」と言う声が多かった。
今日配られたバーレーは、かなり軽い物を選んできたとの話ではあるが、それでも煙は粗く、咽に刺激があり、若干の塩気を感じる味わいであった。
ヴァージニアは、「イングリッシュブレンドのシガレット」を彷彿させる味わいで、仄かな甘味と旨味があり、煙の粒子も細かい。
オリエントの2種(トルコ・ギリシャ)にも火を付けてみたが、トルコは葉も香りも少々青い感じで、香りが強く膨らみがやや弱い、ギリシャの方はやや線が細いながらも、香り膨らみのバランスが良い味わいであった。
と、ここでオリエントの味わいについて訊ねてみた所、堀之内氏によれば、産地や畑によっても味わいは変わるが、「ギリシャのバスマ産の物が一番旨い」と言う事であった。


こうしてサンプルを手に取ってみたり、単葉の試喫をしたりしながら、楽しく進んで行った第二部でしたが、やはり私が恐れていた発言が出てしまいました。
口火を切ったのは初老の男性で、「JTのパイプタバコは美味くないですね」そして、その発言に合わせる様に、聴講者の何人かが頷く。
それに対し堀之内氏は、「まぁ…」と笑顔で言葉を切りながら、「そうですね、これなんか良いですよ」とサンプル展示の板状にプレスされたタバコの一枚を持ち上げた。
厚さが5〜6cm、40〜50cm四方の板状で、レモン色、明るい茶色、暗い茶色、そして漆黒に近い色の葉が重なり合う様にプレスされている物であったが、その正体はフォレストのケークとの事。
ヴァージニア・バーレー・ブラックキャベンディッシュにウィスキー着香を施し、製法はレディーラブド、JT製品の中では、最もデンマークの黄金律に近いブレンドと言えるパイプタバコだと思う。
確認した所、JTのパイプタバコは、レディーラブド製法がビックホーン以降、ブラックキャベンディッシュの登場がカピート以降との事であるので、スタンダードなブレンドのダニッシュと言える物は、フォレストが最初と考えて良い。

そんなこんなで、話は中々尽きなかったが、ふと時計に目を上げるとすでに5時を回っていた。
確か当初の終了予定時刻が4時20分だったはずなので、かなり大幅な超過と言える。
第一部が長引いたのが原因であるが、パイプワールドのスタッフが腕時計を見ながらソワソワとし始めた。
結局「時間が超過しているので、そろそろ終わりにいたします」とのアナウンスで、バタバタとした閉会となった。
慌てて会場を片付け始めたスタッフを背にフロアーへと出ると、すでに創立30周年記念パーティーに参加される方々が集まり初めていた。
先ほど別れたパイプ仲間達と言えば、作者さんのグループは有田友の会のオフ会に、ネット仲間は五反田の野村たばこでオフ会と、それぞれ出かけた模様である。
「さて、もう一度エスプレッソでも飲んで帰るか」
気持ちを会場に残したまま、私はパイプを咥えてホテルを後にした。

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作者注:写真は許可を得て掲載いたしました。

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