20-2 スモークイン山形(後編)
(第21回 東北パイプスモーキング選手権大会)

2002年11月15日号


まず競技の手順であるが、5分間で3gのタバコをパイプに詰める、A4の白紙はこの時使用される。
そして開始の声と共に、1分間で着火を完了しなければならないのであるが、支給されているマッチは2本、着火ミスは即、命取りになる。
しわぶき一つ起こらない静寂した時間が流れる。
「1分立ちました、それでは計測に入ります」との司会の一声と共に、コンテストの幕が切って落とされた。
ここから先は、火をつける事は一切許されない。
とその時、会場の一角から突然歓声が上がる、振り返ると常連の一人が着火に失敗し、挙手をしていた。
そして、会場からの野次に照れ笑いを作りながら、退席して行ったが、記録は1分18秒、着火の1分も計測に入っているので、正味18秒でのリタイアである、一瞬であるが会場の空気が和む。
続いて、2分、5分と着火失敗組みが落ちてゆく、中々厳しい現状である。

私の方はと言うと、初参加のスモーキングコンテストである、決して無策で臨んでいる訳ではない。
そこは流石に、パイプスモーカーの端くれである、せめて最後まで吸い切らねば恥と言う事で、幾つかの注意点は用意して来ている。
まず、最も肝心な着火時の注意点は2つ、タバコの上部に細かい葉を集める事と、着火時のタバコの膨らみが、ボウルトップからはみ出ない様に、チャンバーの8割程度の所までに詰め切る事。
何故ならボウルトップより、大幅にタバコが盛り上がってしまった場合、マッチの火は簡単には、タバコに乗ってくれなくなるからである。

兎にも角にも、無難に着火を終えて、煙を安定させる作業に入るが、ここで又、チャンバーを覗き込みながら、次の注意点をチェックする。
それは、固めに詰めた時等にしばしば経験する事であるが、喫煙の序盤にタバコとチャンバー壁の間に隙間ができる事がある。
大概は自分から見て、右側のチャンバーとタバコの間に隙間が生じる事が多いのであるが、この隙間は丹念につぶさないと、安定した燃焼は中々難しい。
何度か確認しながら隙間をつぶし、煙を安定させて本格的にロングスモーキングへと突入する。
「5分経過」
5分毎に経過時間をカウントする、司会のアナウンスが会場に響く。
ここまで来ると流石に火が消える人はグッと減る。
30分経過した時点で、退席した競技者は8名、全部で49名の参加であるから、競技は序盤を過ぎた辺りであろうか。
しかし、この時点で相方の若い衆はすでに退席していた。
「火がもぐってしまった」
との弁ではあるが、まだまだ青いな。
もっとも、こちらが先に退席してしまっては、合わせる顔がなくなるので、一まずは安心と行きたい所であるが、親父さんの方が頑張って煙を上げている、まだまだ気を抜くわけにはいかない。
それに、ここから先には、後半の注意点が控えている。
スモーキングコンテスト参加に臨んで、何回か火を消さないで吸い切る練習をしたのであるが、どうも40分過ぎて終盤に差し掛かる辺りで、火が不意に消える事が多かった。
どうやら、私の喫煙だと、この辺りが鬼門なのであろう。

40分を経過した辺りから、後半戦に臨むために、新たに気持ちを引き締める。
所が、注意して吹かしていたにも関わらず、45分を過ぎた辺りで、妙に吹き戻しの煙が細くなって来た事に気が付いた。
「これはやばい」
慌てて吹き戻しを止めて、吸って吹き戻してを繰り返す。
2回、3回、煙が中々戻って来ない。
このまま、煙が細くなれば万事休すである、背筋に寒い物が走る。
高々パイプの火が消えると言った些細な事なのに、トラウマになりそうな、恐怖に近い感覚である。
更に、強めに吸って吹き戻してを繰り返し、6〜7回辺りで徐々に煙が太さを取り戻してきた。
ホッと胸を撫で下ろしたが、休んでいる暇は無い、これからが本番だからである。
パイプ喫煙の終盤はそこそこ慣れが必要である。
煙と相談しながら、細かくタンピングを行い、フィニッシュまでもって行かなければならない。
ここで、相方の親父さんの手が上がる、喫煙時間50分の少し手前であった。
取り合えず面目は保たれた、後は最後まで吸い切る事に集中するだけである。
流石にここまで来ると、競技者の半数近くは退席しているが、こちらも残されたタバコは後僅かである。
開始より55分の辺りで、タンパーがチャンバー底のカーブに触れる。
ここまで来てしまえば、最後のあがきが残されているのみである。
タンパーの感触を頼りに、燃え残っているタバコを煙道付近に掻き集めるが、良く持って5分と言う所だろう。
何とか1時間の大台に乗せたい所であるが、59分を回った所で、それはやって来た。
スコッ、急に吸い込みが軽くなる、タバコを吸いきった時の特徴である。
確認の為に吹き戻しを掛けてみるが、髪の毛の様な細い煙が僅かに上がっただけであった、ここで私のスモーキングコンテストは終了した。
タイムは59分21秒、順位は21位、極めて平凡ではあるが、最後まで火を消さずに吸い切った訳であるから、取り合えず目標はクリアーされた。
「消えました」と、テーブル担当に申告し、支給されたパイプ、タンパ、足元に用意されていた参加賞のお土産袋を抱えて、そそくさと退席する。

そして、喫煙スペースに戻った私は、早速缶コーヒーを買い込み、参加商品のチェックを始める。
必死でタイムを争っている競技者の横で、気楽なものである。
中身は、競技で支給されたパイプと、お揃いの銀巻きサンドブラストのタンパーを中心に、コンパニオン、アロマキャンドル2、スナッフ2、カフェクレーム1、試供品のオルスボ2、その他もろもろ。
事前の調査で景品の多さは耳にしていたが、噂にたがわぬ品揃えである。
そうこうしている内に時計は競技開始より1時間半をまわり、会場から再び歓声が上がった。
残り4人でのデッドヒートが始まったのである。
何故デッドヒートかと言うと、コンテストの表彰は確かに6名なのであるが、パイプクラブ連盟の公式認定が出るのは3位まで、今回の賞品「ハンドメイドパイプ(作家 山形県 M・MOTOKI)」の授与も、これまた3位までである。
同じ上位入賞者と言えども、3位と4位では雲泥の差がある。
1時間37分、デッドヒートから脱落したのは、優勝候補と目されていた、前回の東北大会2位の実力者であった。
そして残ったのは、各パイプクラブを代表するつわものばかりであるが、ここからが圧巻である。
なんと開始1時間50分を回っても誰一人脱落する人がいないのだ、地方大会のレベルとしては、かなり高いと言える。
1時間52分、まずは青森パイプクラブが脱落、次に1時間55分をもって、すみだ川パイプクラブが脱落し、優勝者が決定。
最後のタイムトライアルに入るが、何ともおしい事に、2時間の大台の少し手前、1時間59分28秒、ベイカーストリートパイプクラブのリタイアを持って競技のすべてが終了した、ひときわ大きな拍手が会場から起こる。
しかし、私が吸い終わってから1時間である、次元の違いを見せ付けられた。

原因は喫煙技術にあるが、その競技用のスモーキングについて軽く触れてみよう。
まず火付けであるが1本目のマッチで軽く炙った後タンピングし、2本目でチョコンと火を乗せるだけらしい。
そして、片燃えの火種を、吹き戻しのみで保たせ、タンピングと、その時の吸い込みで(ルールで、タンピングは吸っている時のみしか行ってはならない)回して行くのだそうだ。
完璧にこれを実行すれば、一周10分でトータル20周、時間にして3時間20分になる計算ではあるが、実際には不可能である。
しかし、全日本や世界大会では2時間20分を越えるタイムも報告されており、通常の喫煙とは別次元と言って差し支えはない。
ただし、この競技用のスモーキングはリスクが高いと思われるので、生兵法で行った場合、途中で消えてしまう事も充分考えられる、自信が無い場合は通常での喫煙の方が無難であろう。

さて、競技の実況も終った事ですし、パイプスモーキングコンテストのもう一つの楽しみ、賞の発表と懇親会の事に触れて終わりに致しましょう。
実は、こちらの方を楽しみにしているパイプスモーカーも多いとの話である。
競技が終った段階で、即集計作業に入るわけだが、表彰式までの間のつなぎとして、競技中に用意されていた、別テーブルで懇親会を行うと言うわけだ。
早速会場を移動するが、まず最初に順位表が配られる、中々迅速な対応である。
用意されていた飲食物も、テーブルの上のオードブルとソフトドリンクの他に、樽酒を始めアルコール各種に、山形名産の日本そば、玉こんにゃく、芋煮も脇のコーナーに用意されていた、昼食を控えておいて正解の内容である。
そして、しばし歓談、懇親の後、各賞の発表である。
確か、個人戦6位まで、団体戦6位まで、そして女性の優勝者だったと記憶している。
ちなみに、団体戦はそれぞれのパイプ倶楽部の、成績上位者3名の合計タイムで争われるが、団体戦でも、ベイカーストリートパイプ倶楽部が、合計タイム4時間45分21秒で優勝をさらっていった。

しかし、本当のお楽しみはこの後である。
ここまでの発表はタイム、実力が物を言う世界であるが、その後に続く特別賞は運のみで、お楽しみの要素が強い。
特別賞の最初の受賞者はブービーメーカー、賞品は「消火器」、火を消すのが上手いと言う、洒落た心遣いである。
その後、ブービー賞、ラッキーセブン賞と続くが、実を言うと私も特別賞の授与が確定していたのである。
そう、今回は21回東北大会であり、私の順位も21位である、大会賞と言う名前で毎回恒例になっているそうだ。
賞品は、今回のホスト、山形霞城パイプ倶楽部の、大会事務局長が山形最大手の酒屋だった事もあり、お酒がかなり豊富に用意されていた。
こうして、両手に賞品をぶら下げての帰還となったわけであるが、肩身の狭い日常を送っているパイプスモーカーにとっては、中々居心地の良い空間であった。
懇親会、お土産(参加賞、特別賞)等も、会費を考えても十分お釣りの来る内容であるので、興味のある人は参加してみて損はないであろう。
ただし、記録を狙うのであれば、競技用のロングバーニングの技術を磨いて参戦しないと、手も足も出ない事は、心に刻んでおくべきである。


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