17-1 パイプをくゆらす(吹き戻しについて)

2002年8月9日号


 今回は、珍しく単刀直入な話の展開にいたしましょう。
 お題は「パイプをくゆらす」、パイプ喫煙の最もパイプ喫煙らしい所である。

 平たく表現すれば、パイプの吸い方であるが、入門書や、インターネット上のHOW TOには、こうやって書かれていることが多い。
「パイプの吸い方は、ゆったりとした気持ちで、呼吸をするように、ゆっくりと吸ったり吐いたりする」
 正直いってこの説明は、初心者の頃の私にとって、大いなる悩みの種であった。
 この「呼吸をする様に、吸ったり吐いたりする」と言う表現は、「肺喫煙を楽しむ」の項で紹介したアインシュタインの喫煙法、「肺に煙を流し込む様な喫煙」と言う記事と相俟って、私を非常に迷わせたのである。

 「アインシュタインの喫煙法である、パイプを咥えたまま、直接、煙を肺に入れたり出したりするのが、本当の喫煙なのであろうか」と言った、今から考えれば、勘違いもはなはだしいと言える悩みだった。
 もっとも、アインシュタインの喫煙風景をテレビで観たり、口腔喫煙(通称 ふかし)や、パイプ、葉巻の味わい方を学んだ今では、その様な考え方をする事はないのだが、喫煙経験の全く無い人にとって、上記の説明は故をもって、不充分であると考えるので、補足させていただく。
「パイプの喫煙は、基本的には口腔、すなわち口でタバコの旨みや、香りを楽しむもので、煙を肺には入れない。そしてその吸い方であるが、呼吸をするようなユッタリとしたリズムで、煙を口に含んだり、口に含んだ煙をパイプに吹き戻したりする。」である。
 文章的には、いささか興をそがれる言いまわしではあるが、パイプの喫煙法を正確に表すと言う事に関して言えば、この方が良いと考える。
 そして、この吹き戻しと言う行為は、パイプ喫煙の最大の特徴であり、「くゆらす」と言った言葉が一番似合う行為でもある。
 漫画などで時々パイプを吸っている場面が出てくる事があるが、大抵は、パイプを咥え、ボウルトップからユラユラと煙を立ち昇らせていると言った、紋切り型の構図である。
 しかし、これはパイプ喫煙のあり方を真に正確に捉えていた訳である。

ここで、もう一度パイプの喫煙のあり方に戻るが、パイプはただ吸えば良いと言うものではない。
 「パイプ喫煙の技術について」の項で紹介した様に、パイプ喫煙はチャンバー、すなわち炉の火の管理をする事が大切なのである。
 具体的な表現をすると、「パイプ喫煙は、タバコの味わいを楽しむ時の為に、常にチャンバー内の火種を、ベストの状態に保たなければならない」と言う事であり、常にユックリとではあるが、チャンバー内の空気を動かし続けていなければならない。
 そして、これが「パイプをくゆらす」の正体と言っても過言ではない。
 ところが、ここで大きな問題に突き当たる。
 それは、何故パイプ喫煙に「吹き戻し」が必要なのかである。
 まずはネット等で時々みかける、パイプ内で発生したジュースを、吹き戻しでチャンバー内に戻すと言う事があるだろう。
 更に、咥えたままで吸ったり吐いたりする事で、チャンバー内の空気を間断なく動かす事ができると言う事も考えられる。
 しかし「吹き戻し」の本当の役目は、低温喫煙で綺麗にタバコを燃焼させる為には、必要不可欠であると言う事だと言い切って良い。


BCミラージュ&ダンヒル965

 ここで又、葉巻を例にとってみるが、対象となる葉巻はハンドメイドシガーで、できれば直径16mmを超えるコロナ以上のサイズが望ましい。
 前起きはこの位にして、葉巻喫煙で常識となっているのが、「灰を落とした時の火口の形は、速く吸い過ぎると中心を頂点に山形になり、遅過ぎると中心がへこんだ形になる」と言うものである。
 これは、葉巻の火が、円の中心から外側に向けて延焼して行く為におきる現象だが、パイプスモーカーは丁度、この葉巻の中心がへこむ位のスローバーニングをしている。
 いや、多分それよりも更にゆっくりとしたリズムで吸っている、にもかかわらずチャンバー内のタバコを綺麗な灰にして行く、非常に矛盾している行為である。
 これは一重に「吹き戻し」の技術があったればこそであり、パイプ喫煙に吹き戻しが必要な理由でもある。
 考えてみてほしい、吸いながらタバコを燃やした場合、火の進行方向と空気の流れは同一方向を向く。
 ユックリと燃焼させれば当然、タバコの火はチャンバー全体に行き渡らないまま、どんどんチャンバーの底に向けて燃え進んで行く。
 それに引き換え「吹き戻し」は、火の進行方向と逆の方向に空気が流れる。
 その結果、タバコはほとんど燃え進まない状態で火種が保たれて行く。
 少々強めに長く吹き戻しを掛ければ、ほとんどタバコを燃え進ませない状態のまま、チャンバー全体に火を行き渡らせる事もできる。
 これは、パイプスモーキング大会(ロングバーニングコンテスト)で基本となる技術だそうだが、ロングバーニングコンテストで上位に入る為には、タバコを吸う行為は極力少なくし、吹き戻しを中心にスモーキングする必要があるそうである。
 まあ、「吹き戻し」は、タバコを燃え進ませないで、火種を確保する、又は延焼を促す技術と言って良いが、低温燃焼と均一燃焼の二つの矛盾する行為は、タバコを吸う行為と、吹き戻す行為の微妙なバランスの上に成り立っていると言う事なのであろう。
 最後に、このように、吸ったり吹き戻したりを上手にこなしているパイプスモーカーは、実にユッタリと、美味しそうにパイプをくゆらせている様に見えるから不思議である。

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