15-1 パイプスモーカーは皆トルセドル

2002年6月14日号


「トルセドル」あまり聞き慣れない単語である。
それもそのはず、この「トルセドル」は葉巻職人、正確に書くと、ハンドメイドシガー(ハバナで言う所の、トータリメンテ・ア・マノ)のラッパー・キャップ等の仕上げを担当する、腕の良い職人の事を指す単語である。
すなわち、前章の「パイプ喫煙の技術について」で書いた、「葉巻は非常に完成されたタバコで、パイプは未完成のタバコである」のタネ明かしを、ここでしようと言う訳である。

葉巻にくわしい知り合いの話によると、「葉巻は、味わい方のレールがすでに敷かれていて、スモーカーはいかにそのレールに沿って味わうかだと思う」と言う事である。
フィラー、バインダー、ラッパーの三層構造になっている葉巻は、ブレンダーによって、何処の国の、どの農場、その中のどの地域のタバコをブレンドするかが決められているそうである。
しかし、葉巻と言ってもピンキリであるとは思うが、ハバナに関しては、何処の工場で、どのレベルのトルセドルが仕上げるか辺りまで決まっているとも聞いている。さらに葉巻はタバコのブレンドに止まらない。
それぞれのブレンドに合わせたビトラが存在する。
「ビトラ」、簡単に言ってしまえば、ハバナ特有の、葉巻のサイズ・形状の事である。
確かにこの「ビトラ」と言う単語であるが、シェイプと言った概念に近いとも言えるが、とてもシェイプと言う言葉では収まりきれ無い程の種類が存在している。
極端な話をすると、それぞれのブレンドに合わせた、固有のサイズ・形状があると言っても過言ではない。
 以上の様に、ハバナ辺りのハンドメイドシガーは、ブレンダーの意図した通りの味わいを再現できるように作られた、徹底的に完成されたタバコと言えそうである。

それに比べてパイプであるが、確かにタバコのブレンドに関しては完成されていると言って良いのだが、ハバナのビトラに相当する、パイプのシェイプとサイズは自らが選択しなければならない。
そして、自ら選んだパイプに、自分でタバコ葉を詰めなければならないのであるから、葉巻職人と同等の仕事をしている事になる。
下手に詰めれば、それこそ、下手な職人が巻いた葉巻の様に、巻きが固くて吸えなかったり、緩くてスカスカだったりと、要はハズレの葉巻と同じ事になってしまう。
であるから、詰めるタバコのタイプや、喫煙のシュチュエーションに合ったパイプを上手に選択し、さらに最後までストレス無く吸える様に、巧みにタバコを詰める事ができる程の腕前を持った熟練パイプスモーカーは、一流の葉巻職人「トルセドル」と言っても差し支え無いのではなかろうかと考えている。
前置きが長くなったが、上記に書いた様に、タバコをパイプに詰めると一言で言うが、パイプ喫煙には事ほど左様に大切な事なのである。

これについて、「パイプ入門セットについて」で取り上げた、カール・エーワ・ジュニアは、初心者向けの講座の中で次の様に書いている。
「最も重要な勉強はいかにしてパイプにタバコをつめ、それに火をつけるかということである。これさえマスターしておけば、余程そのあとで妙なことさえしなければ、あとは水のながれるごとく万事うまくゆくものだ」
そして、このカール・エーワが最もしてはいけないと言っているのが「強く詰めすぎる」事である。

柔らか目に詰めた場合は、喫煙しながらタンパーで調節も効くが、空気が通らない程ガチガチに詰めてしまった場合は、チャンバーの中のタバコを一度外にぶちまけて、詰め直す以外にトラブルに対応する術は無い。
それから、片詰めも良くない。
最良の詰め方は、カール・エーワーが、ピンチ・メソッドと呼んでいる、上から下まできっちりと均一に詰める事だが、タバコの詰め方に粗密ができると、火は空気の流入の良い方ばかりに回り、固く詰められた方には中々回ってはくれない。
しかもこうした、中々火が入ってくれない個所が出来てしまうと、結構最後までその場所は祟るもので、火の回りの悪い個所は、最後まで火が回らないまま残ってしまう。

では、どうすれば上手く詰められるのか、まず最初にすべき事はタバコを均一にほぐす事である、そしてその段階で固い枝の様なタバコを除いて、均一にタバコを詰め易い様、準備する事である。
慣れて来ればここまでやる必要は無いが、しかし前もってタバコを詰め易くしておく事は、決して邪魔にはならない。

さらに、乾燥気味のタバコは少々強めに詰めても良いが、水分含有量が多く、柔らかく細いキザミのタバコは、強く詰めすぎると空気の通りが極端に悪くなるので気を付けた方が良い。
所でタバコの詰め方で、「最初に子供の手で、次に女の手で、最後に男の手でタバコを詰める」と言う古い格言があるが、これは俗に言う三段詰めの秘訣を説明したものである。
この格言に対し、北欧パイプ・スモーカーズ・ギルドの創立者にして、デンマークのパイプ専門雑誌「STOP」の主催者であった、ポール・C・オーりックは、「古くから語り伝えられているこの言葉は、今だもって真実である」と言っているが、これが初心者には、少々難しい詰め方であると思う。
私がパイプを吸い始めた頃の事であるが、この格言通り一生懸命タバコを詰めたものである。
しかし、そこは初心者の悲しさ、勢い一段目、二段目、三段目と意識しすぎて、見事に三つの階層に分けて、タバコを詰めたものである。
結果はと言うと、一段目が燃えると二段目の所で火が消える、そして二段目に火を付けると、今度は三段目の所で火が消えると言った具合であった。
格言は確かに正しいのであるが、これはあくまでも、チャンバーの下から上までをキッチリと詰める為の詰め方であり、煎じ詰めると、三段詰が目的ではなく、チャンバー内のタバコ全体が、一体感を持つ詰め方を目指したものであると言う事だと思う。
そこで私の三段詰の仕方であるが、一段目は入れる程度、二段目はならす程度、そして肝心なのは三段目で、火皿からはみ出しているタバコを押し込む様な感じで詰めるのだが、この時タバコ全体が沈み込んで行く感覚を指で感じるのが大切である、ここで三回に分けて詰めたタバコに一体感が生じるのである。
前述の失敗三段詰の時の誤りは、詰めたタバコの上の部分だけを固くしていた所にあり、それにより段の間に断絶が起こっていた、つまりチャンバー内のタバコの一体感を無視して、タバコを詰めていたのである。
さらに、三段目でタバコを押し込む時の注意点だが、チャンバー壁に接しているタバコは燃えにくいと言う事に留意して、決してチャンバー壁付近に固詰めの個所を作らない事である。

次に、ショートスモーク等の小ぶりなパイプにタバコを詰める時であるが、結構手軽にタバコを詰めている。
某有名サイトにも紹介されている詰め方だが、まず親指、人差し指、中指で多めにタバコを摘まむ。
そしてそのままタバコを、チャンバー径よりやや細く、チャンバーの深さより少し長めになる様、円筒形に成型し、チャンバー内に差し込んで行くのである。
そして仕上げは、チャンバーから飛び出している部分を押し込んで、均等な固さになる様タバコをならして終わりと言う詰め方である。
もっとも、15〜20分程度のショートスモーク、ないしは肺喫煙する時にしか、この様な詰め方はしないが、一つまみのタバコを円筒形に成型して詰める為に、タバコの一体感は結構良好で、上手く詰められた時など、特にタンピングしなくても7〜8割がたタバコを灰にできる事もある。


最後になるが、カール・エーワがタバコを詰める時に、もう一つ注意すべき点を上げている。
それは「ドラフト・ホール、いわゆる煙道の方までタバコが入らない様に注意してタバコを詰めよ」と言う事である。
これは、私も時々やってしまう事なのであるが、喫煙の後半タンパーで強めにタバコを押さえた時、または強めにパイプを吸った時等に、チョットした拍子にタバコの葉が煙道に入り込む事がある。
これは中々厄介なトラブルで、もともと煙道なる物は煙を通す為の物で、その径は3〜4ミリ程度とかなり細い、そこにタバコの葉が入り込むのであるから吸い込みは途端に悪くなる。
チャンバー内でタバコを固くしてしまったのであれば、上手く調節して火を回す事により、吸い込みの悪さを解消できる事もあるが、一端煙道にタバコが入ってしまった場合は、喫煙を終えて煙道にモールを通すまでトラブルが解消する事はないのである。
では、このトラブルを防ぐ為にはどうしたら良いのか、それは幾つかあるパイプのアクセサリーの中の、チャンバーの底に空間を作る為の道具、火皿フィルターや火皿スクリーンを使えば良い。

ホットグリル:6個 1,200円

火皿フィルター:400円

火皿スクリーン:5枚入り 400円

もしくは、昔の入門書に書かれている「シガレットの紙をまるめてボウルの底に押し込め」と言う忠告を実践するかである。
これらは、煙道にタバコが入り込むのを防ぐと同時に、チャンバーの底に溜まるジュースを吸収させたりする為の手段であるが、これをタバコでやってしまう方法をとある所から入手したので紹介してみよう。
まず、タバコを詰め始める前に、ほんの少量のタバコを取り出し、親指と人差し指で固めにまるめて、タバコの玉を作るのである。
そしてそれをチャンバーの底に入れて、後は何時もの通りにタバコを詰めるのである。
これは、火皿フィルターをタバコの玉で代用するやり方であるが、中々具合は良い様である。
火皿の底に固い玉になったタバコがある為に、タバコが煙道に入る事はないし、この玉がジュースを吸ってくれる役目をしてくれる。
さらに、あらかたタバコを灰にしてからパイプをさかさまにして、ノッカーにトントンと打ちつけると、ポンとタバコの玉が出てくる、灰を捨てる事も簡単である。
ただし、このタバコの玉まで灰にする事は少々難しい、固く丸めてあるので玉として独立してしまっている上に、ジュースを吸ってベタベタになっている為、かなり上手に吸わなければ、火は玉に燃え移ってくれない。
しかしこれは、中々面白い方法なので、一度試してみる事をお勧めする。
まだまだ書く事はあるのだが、少々文章が長くなってしまったので、今回はこの辺までとして、残りは次回に回す事にさせていただこう。


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